アクリル板に殴られたようなストロークで広がる油絵。そこから、浮かび上がるように姿を表す人の形。透き通るような美しさとともに、ちょっとした怖さ。庄司朝美の作品にはそんな印象を受ける。キャンバスでも紙にでもなく描かれた作品、そして、描かれた人物とは?
〝絵が上手な子〟として成長してきた彼女にとって、美術学校へ行くことは当たり前の選択だった。しかし、自分に合うメディアに出会うまでは時間を要したそう。 「版画を専攻していましたが、ずっと油絵を描きたいと思っていました。でも、キャンバスは織物なので、その上にイメージを作り出すには物質的な抵抗があって、素材的に強過ぎる。逆に紙だと弱過ぎて。その間のものを探していました」
そんな時に出会ったのがアクリル板だった。 「展示間近なのに、作品が仕上げられず、最初は紙に描いた作品を切って額に入れていたんですけど、面倒くさくなって、アクリルに直接描けば良いんだ!と、思いついたんです(笑)。やすったらツルツルした表面にも鉛筆で描けるようになって、ちょうど(キャンバスと紙の)中間くらいの素材になったんです」
oil on plexi board / 220×405 gallery21yo-j, Tokyo Photo by Shiigi Shizune
手で触って、自分の体やそこにある環境の変化を身体で探りながら、素材の中にどういうイメージが見えるのかを模索しながら制作が始まると話す彼女。では、実際にそこに描かれたものは何を表しているのだろう。
「表現をする上で焦点を当てていることは、身体性という問題です。絵画を見る経験の中で生まれる身体イメージや感覚について考えています。あとは、人がアイデアを形にする過程に興味があり、最近はアニメーションの制作もやっています。その手法だとそういった過程が表現しやすいんです」
oil on plexi board / 22.9×59 Tokyo wonder site, Tokyo Photo by Kato Ken.
制作の幅を広げ、勢いを増す彼女が次に取り組む個展についても話しを訊いた。
「いつも展示空間を見た後に作品を決めます。次に展示をする〈Cale〉は2階から見下ろせるんですよね、だから今回は床にアクリル板を置いて、来た人はその上を通って、上から観れる作品を作ろうと思っています」
メディアを巧みに操り生まれているようで、偶然性を自然と受け入れて生み出される彼女の作品。奇妙な神秘性が観るものに訴えかける。次回の個展を筆頭に、今後の活躍が気になる作家だ。
『泥のダイアグラム』
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1 / 32月23日〜3月11日/Cale gallery
庄司朝美
しょうじ・あさみ
1988年、福島県出身。2012年に多摩美術大学美術研究科絵画専攻を修了。2015年にトーキョーワンダーウォールでトーキョーワンダーウォール賞を受賞。東京を拠点に活動中。
Portrait: Photo by Shinnosuke Mushiake (Side Burn)