「エンパワーメント」なる言葉がもはや常識となった今、こと映画界でもその流れが顕著なのは周知のとおり。というわけで、さまざまなストレス社会を生き抜く私たちを鼓舞し続けてくれる永遠のミューズを掘り下げてから、意外なあの俳優たちが男顔負けなパワフル女性を演じる注目の新作をどどんとご紹介。そう、時代はパワー!!
クリステン・スチュワートという生き方。強い女にいま、夢中!

強さの秘密は磨き上げた
3つの力にあり
クリステン・スチュワートほど、新時代のパワフルなヒロイン像を体現する人もいない。それは彼女がキャリアの中で磨き上げてきた、3つの“力”に象徴される。
まずはもちろん“演技力”。『トワイライト』シリーズのか弱い少女ベラ役でアイドル的人気を獲得した彼女は、フランスの鬼才オリヴィエ・アサヤスが手掛けた『アクトレス〜女たちの舞台〜』で大化け。これみよがしな怪演ではなく、抑制の利いた繊細な演技こそが、これからの表現の強さであることを証明してしまった。実際、本作でセザール賞助演女優賞受賞というアメリカ人女優として史上初の快挙を成し遂げた彼女は、ダイアナ妃を演じた『スペンサー ダイアナの決意』で米アカデミー賞にノミネート。演技派の地位を確立した。
もうひとつ重要なのが、“エンパワーメント力”。2017年に『サタデー・ナイト・ライブ』でレズビアンであることをカミングアウトして以降は、『ハピエスト・ホリデー 私たちのカミングアウト』『愛はステロイド』といったクィア映画に出演し、性的マイノリティのエンパワーメントにも尽力している。その2作にも共通するように、ハリウッドで活躍する機会の少ない女性監督とのコラボレーションに積極的なのも見逃せない。
それはいつしか自身の創造性も刺激したようで、長編監督デビュー作『The Chronology of Water』の制作が発表されたのは、2018年のこと。何度も暗礁に乗り上げたものの、最終的には「この映画を作り終えるまで他の作品には出ない」と宣言し、“力ずく”で完成まで漕ぎつけた本作は、2025年のカンヌ国際映画祭でお披露目されて拍手喝采された。
最後は“ファッション力”。14年から〈シャネル〉のミューズを務める彼女の装いは、いつでも注目の的。最近は、大胆な肌見せをものともしないロックなスタイルが板について、彼女の演技とも響き合うような、クールなパワフルさがみなぎっている。今後もしばらくは彼女の一挙手一投足から目が離せない。
Text_Keisuke Kagiwada












