2025年8月16日(土)〜8月31日(日)のあいだ、ギャラリースペース(Tentative)にて、写真家・水谷太郎の個展『12000』が開かれる。『12000』という膨大な数字とはなんぞや?そしてその主題とは?ありふれすぎていて逆に考えることのない、思索にふけることのできる展示が繰り広げられる。写真家から届いたステイトメントやイメージのインパクトが大きくて、水谷氏本人にも、GINZAの撮影の合間にちょこっとだけ話を聞いた。
その数字とは?写真家・水谷太郎が開く個展『12000』
従来から抱いていた「光」への興味を込めた写真&映像作品が

写真家はみな常に光を見つめ、操っている。それは晴れでも、たとえ曇りでも雨だとしても。もちろんスタジオの中でも。話を聞いたその撮影現場でも、水谷氏は常にベストな光を探していた。
個展『12000』は氏が、写真と向き合うなかで根源的に抱いていた「光」への興味がはじまりにある。
「12000年前に人間は農耕を始めて、太陽の光とともに生活をしていました。いまは、朝も、夜も、常に明るい。スマートフォンを一日中見て、情報の光を浴び続けて。そんな現代において、本来の『光』とはなんなのだろう、と考えていました」(水谷)。

クリエイティブスタジオである(Tentative)から展示の話があったときに、一番に浮かんだのがこの「光」という、元来興味を持ち続けていた題材から発起した作品群だった。人々が光を操るようになった12000年という月日のなかで、現代では「光」は自然のものだけでなく、人工的に自在に作り出されるものとなった。ときに情報をはらんだ光に人々が吸い寄せられている様子から、水谷氏はあらためて「光」について思いを馳せていたという。
展示される作品群では、光を放つ者が彷徨う様子が写される。これは、写真の加工などにより光らせているのではなく、スタイリスト・石井大、美術・松本千広の協力により、実際に光る(!)被写体を撮影したそうだ。
「以前にも全身を鏡で覆った服を石井さんに作ってもらい撮ったことがあって。今回は松本さんも加わり、LEDを仕込んで発光する服を制作しました。着用すると熱いので、昨年末、極寒の北海道で撮影を行いました。よく見ると、レースのあしらいがあったりファッション性も感じるものになっているんです」と水谷氏。写真そのものはもちろん、被写体の構造も気になるところだが、ファッションらしいディテールを込めている点もこのチームならではかもしれない。細部まで目を凝らしてみたい。

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