空や海色の静けさや、孤独や憂鬱、ときには若さを意味する青。キーカラーとなる朝ドラヒロインの青とは──
青のカルチャー論〜『半分、青い。』永野芽郁さんに聞く

月から土まで、毎朝15分間。物心ついた頃から、BSの先行放送でNHKの連続テレビ小説(以下朝ドラ)を観てから登校するのが日課だった。たとえば、明治時代にも男性に引けをとらない女性がいたんだとか、専業主婦がただ1人になりたくて部屋を借りたりするんだなぁとか。そういう感情は、小説やマンガと同じくらい、朝ドラが教えてくれた。
少女から大人への成長を見守るブルー。
1961年から始まり、現在は6カ月クールで主人公の半生や生涯を描いている朝ドラ。主人公は架空だったり、実在の人物がモデルだったりするが、もっぱら女性が多い。子どもから大人へと成長してゆく女性たちが背負っているのは、やっぱりブルーなのである。振り返ってみても、『純情きらり』『あまちゃん』『まれ』『とと姉ちゃん』も、キーカラーには青があった。
色彩心理学のリートライス・アイスマンによると、青は信頼感や忠誠心を象徴する色だという。色がキャラクターにアクティブな強さというパワーを与えるそうだ。
現在放送中の第98作目1『半分、青い。』のビジュアルも、ヒロイン・鈴愛が空を背景にジャンプしている。そのタイトルも、幼少期に片耳が聴こえなくなった鈴愛が、雨の音を聴いて、「面白い!半分だけ雨降っとる!」と、ポジティブに世の中を見据える姿勢に由来する。鈴愛の心にはいつも、半分青空が広がっている。今回、運命の少女漫画との出会いから上京した鈴愛の奮闘を描く、東京編の現場を取材させてもらった。
お邪魔したのは、鈴愛が岐阜の実家、ふくろう商店街の「つくし食堂」にいる夢を見ているシーンの収録日。
鈴愛(永野芽郁さん)のおばあちゃん役で普段はナレーションを担当している風吹ジュンさんが楡野家と初共演した記念すべき日(6/27放送)の撮影に潜入。奇跡の共演シーンに立ち会えて、スタッフ一同、感無量!
ヒロインの心の情景はいつだって半分、青い。
たとえば、95年から99年までの5年間をピョーンと飛び越える数10シーンの撮影が1日の中で行われるNHK内のスタジオは、緊張感はありつつも想像以上に和気あいあいとした雰囲気。今日は東京編に入って以来、久しぶりの実家での撮影なのだとスタッフさんが教えてくれた。鈴愛をはじめ、実家楡野家のメンバーは、カメラが回っていないときも楽屋に戻ることなくおしゃべりを続けていて、まさに「鈴愛ちゃんおかえり!」ムードが全開。そして、そこで誰よりも発光していたのは、もちろん、ヒロイン役の永野芽郁さんだ。現場の癒しであり、ムードメイカーの彼女は、完全に〝鈴愛ちゃん〟として降臨していた。
マイペースで前向きなところがヒロイン・鈴愛の性格と重なるのは、自他共に認める事実とか。 「鈴愛もいろいろ壁にぶつかってますけど、必ず最後はまたがんばろう!という気持ちになる子なので、そういうところは一緒だなぁと」
永野さん、CMなどの印象もあってか、「青のイメージをもたれることが多いんです」と微笑む。
「私の中で青っていう色は、パッと晴れやかに抜けてる気もするけど、どこか子どもな部分が残っているイメージもあるんです。『半分、青い。』というタイトルもそうですが、自分のそういう青い気持ちも込めて、未熟な鈴愛がちょっとずつヒロインとして成長していくところをうまく表現できたらいいなと思っています」
ヒロインたちは、半分子どもで、半分大人だ。その曇りがちな時代を抜ければ、いつかどこかで清々しい青空が待っている。そう信じさせてくれることこそが、朝ドラのヒロインに求められる気質なのかもしれない。かくあるべきという正解はないけれど、永野さんはこう考える。「朝見た人に、清々しい気持ちになってもらえること。ドラマ全体を通して作っていくものですけど、ヒロインが引っ張っていくものだと思ってやっています」。そうキリッと語りながらも、「どうしよう!あと4カ月で終わるんだ!寂しくなってきた!私絶対泣くと思う!」と笑顔でスタッフとじゃれ合う彼女、どっちもとびきりかわいくて撮影中、心の中で100回は「鈴愛ちゃん、かわいい!」と唱えていたことをここに報告します。
【”青”を背負う朝ドラガイド】





連続テレビ小説『半分、青い。』:昭和後期から平成、あぶなっかしくもバイタリティあふれるヒロイン・楡野鈴愛が、挫折しながらも失敗を恐れずに前向きに生きぬいていく物語。『ロングバケーション』の北川悦吏子による書き下ろしオリジナル脚本で、漫画家くらもちふさこによる傑作がタイトルをそのままに登場していてファンとしては胸アツ。作者は秋風羽織(豊川悦司)という設定になっている。太陽をつかむように鈴愛がジャンプするメインポスターは、レスリー・キー撮影、森本千絵さんクリエイティブディレクションによるもの。NHK総合にて月〜土・午前8:00〜8:15放送。
『純情きらり』完全版 DVD-BOX1:愛知県の岡崎を舞台に、おてんばな少女・有森桜子(宮﨑あおい)が、突然の父の死や戦争に翻弄されながらも、音楽への愛を燃やし続ける姿が感動的。津島佑子の小説『火の山 ―山猿記』を原案に、浅野妙子が脚本を手がけた。NHKエンタープライズ ファミリー倶楽部 0120-255-288 ©2007 NHK
『あまちゃん』完全版 DVD-BOX1 新価格版:宮藤官九郎が脚本を書き下ろした。北三陸へ転校した16歳の少女アキ(能年玲奈)が、海女のちにアイドルを目指す物語。初回「おら、この海が好きだ!」のみ、方言字幕をつけてあとはほぼ方言風の標準語に戻したことでも話題を呼んだ。NHKエンタープライズ ファミリー倶楽部 ©2013 NHK
『まれ』完全版 DVD-BOX1:夢が嫌いで地道にコツコツがモットーの少女・津村希(土屋太鳳)が、石川県能登の漁村と横浜という2つの海辺のある場所を舞台に、ケーキ職人の夢を取り戻していく物語。篠﨑絵里子脚本。¥11,400/発行・販売元:NHKエンタープライズ ©2015 NHK
『とと姉ちゃん』完全版 DVD-BOX1:雑誌『暮しの手帖』の創刊者・大橋鎭子の生涯をモチーフに、「当たり前の生活を大切にする」という亡き父の教えを胸に戦前・戦後を生き抜いた主人公小橋常子(高畑充希)と家族の人生を綴る。西田征史脚本。¥11,400/発行・販売元:NHKエンタープライズ ©2016 NHK





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