あんなに暑い夏だったのに、いざ終わってしまうと思うと、なんだかさみしい。汗ダクになったぶんだけ、心にポッカリ穴があくのです。晩夏。夏の終わり。その言葉を聞いただけで、 なんとなくセンチメンタルな気分になる。春夏秋冬を人生にたとえるなら、夏は青春。晩夏は青春の終わりの暗示なのかもしれない。そんなとき、あなたならどんな歌を聴きますか?過ぎゆく夏を惜しみながら聞きたいエレジーを一曲教えてください。
清水ミチコが選ぶ、エレジーな一曲
詞・曲●Antonio Carlos Jobim / Newton Mendoça
夏というと、野沢直子ちゃんがアメリカから戻ってくるので、みんなでごはんを食べるのが恒例行事。ここ20年くらいはずっとそう。夏が始まると同時にやってきて、飲みに行ったり遊びに行ったり、30人くらい集まる女芸人会を開いたり。そんなふうにひと盛り上がりして、晩夏とともに去って行く。ああいう明るい人って罪ですよね。みんなを賑やかにしてパッと帰っていっちゃうんだから。
直子ちゃんが去ったさびしさじゃないけど、夏の終わりはボサノバのイメージ。小野リサさんとかアントニオ・カルロス・ジョビンとか。「ワン・ノート・サンバ」「おいしい水」「イパネマの娘」。ボサノバってリズムは明るいけれど、メロディに哀愁があるので、歌う人によって明るくもなるし悲しくもなる。だから晩夏を感じるんでしょうね。
うちは、実家が喫茶店なんです。岐阜の高山でジャズ喫茶と普通の喫茶店を経営していて。普通の喫茶店ではいろんな音楽を流すので、夏がジャズ、秋がボサノバ、冬がクラシック、春がポップス&ロック、そんなイメージもあります。高校生の頃は、夏休みになるとジャズ喫茶のほうでいつもバイトしてました。父はマイルス・デイヴィス、MJQ、キース・ジャレット、ビル・エヴァンスなどのモダンジャズを好んでました。私は聴くというより右から左。お客さんが入ってくると「あ、この人はコーヒーだ」って予想するのも好きでした。人間観察ですよね。「この服装はミックスジュースだな」とか。優柔不断な人はだいたい迷いに迷ってミックスジュースなんですよ(笑)。
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清水ミチコ
タレント。1983年、ラジオ番組の放送作家を始め次第に出演するように。以後、独特のモノマネと上質な音楽パロディで注目され幅広い分野で活躍中。9月24日、群馬・渋川市民会館でトーク&ライブを開催。