男女がお互いのコレクションを自由に選べる雰囲気、そもそもユニセックス、女性にしっくりくるメンズブランド。そんなニュートラルな持ち味の服が気になりまくり。日常に溶け込むさりげなさでいて、服オタクが唸る24の注目株を連載で一挙紹介。20-21AWからピックアップしたのはすべてメンズ服。試す価値あり！ #厳選ニュートラルブランド24
👗FASHION
素材にこだわる〈オーラリー〉、遊び心をプラスした〈サイ〉etc. 厳選ニュートラルブランド vol.1
AURALEE
素材への審美眼が生む
ニュースタンダード
無難な色にまとめがちな上質素材をきれいなレモンイエローで表現。アルパカウールビッグカーディガン ¥38,000（オーラリー）
可愛げのあるボリューム感の中綿パンツは、メンズでしか展開していないモデル。キルティングパンツ ¥39,000（オーラリー）
もみ洗い加工で実現したしなやかな素材は、腕まくりして着ても上品。フィンクスコットンツイルシャツ ¥25,000（オーラリー）
デザイナーの岩井良太は、時代にフィットしつつ、タイムレスに好まれる素材を作り出そうとする真摯な作り手。色使いやシルエットにはその時々の気分を盛り込み、肌触りなどの普遍的な要素は快適なものを追求する。今や、〈オーラリー〉はハズレなしの定番ブランドと言えそうだ。しかも、決して守りに入ることはない。発表の場をパリに移し、シーズンごとに、新鮮さを感じるテキスタイルの開拓を行っている。ここで紹介した他にも、ポリウレタンシートのコーティングによるてらてらとした質感のコートや、ハンドペインティングを用いたシリーズなど、刺激的なラインナップが加わり全体の奥行きは増すばかりだ。毎回、新作の発表が楽しみなブランドのひとつ。
Scye
紳士服が持つ堅実さの
向こう側にある遊び心
縮絨と起毛でふかふかなカシミヤ100%。肩がけした袖風パーツはフード一体型。フーデッドスカーフセーター ¥75,000（サイ｜マスターピースショールーム）
トレンチの原型というコートは、ベルトを開ければインナーとのレイヤードも楽しめる。タイロッケンコート ¥150,000（サイベーシックス | マスターピースショールーム）
英国式のテーラリング技術を背景に、ミリタリーやトラッドなどをベースとした機能的なリアルクローズを基軸とする〈サイ〉。デザイナーの日高久代と、パタンナーの宮原秀晃がブランドを始めたのは2000年。当初より男女同型のアイテムが用意され、思い切ったサイジングを求めて女性がメンズサイズを選ぶことも、逆に、男性がコンパクトなフィット感のウィメンズを好むことも多い。最高品質のエジプト超長綿を高密度で打ち込み耐水性と防水性にも優れたコートには、着脱可能なウールの襟とライナーを装備している。上品なカシミヤのニットには、フード一体型の袖のようなスカーフが付属されている。堅すぎず甘すぎないバランスが、おしゃれ心をくすぐる。
CONTEMPO
究極のシンプルは
心身ともにフィットする
比翼仕立て&スリットポケットと削ぎ落としたルックス。ジャケットとコートの中間のようなオーバーサイズが特徴の新型は、XS〜Lのユニセックス展開。太さの異なる糸で織り、ハリのあるざらりとした風合いに。ジャケット ¥60,000（コンテンポ | ヤエカ ホーム ストア）
薄手のウールカシミヤを二重使いした軽く暖かいカットソーのイージーパンツ。脇に縫い目がなく、裾も輪になって縫い目がない分、優しいタッチ。ダブルフェイスパンツ ¥52,000（コンテンポ | ヤエカ ホーム ストア）
ポリエステル、レーヨン、ポリウレタン混合のオリジナル素材で、シワになりにくく洗濯も可。縦横に伸びる通称「2WAY」はノンストレスな着心地で人気の定番。数種の色糸を混ぜた奥行きあるライトブラウンが仲間入り。ストレッチパンツ ¥24,000（コンテンポ | ヤエカ ホーム ストア）
恒久的に着られる服を高いクォリティで作り続けてきた〈ヤエカ〉が、肌が気持ちいいと感じるスキンウェアとして部屋着からスタートさせた〈コンテンポ〉。快適さを求める感覚に男女の境はないという考えのもと展開するのは、究極にシンプルなデザイン、ベーシックな色使い、着る人を選ばないリラックスしたシルエットといった、ジェンダーレスに受け入れられるアイテム。縫い目の目立たない洗練された印象のコートやほどよい抜け感のパンツなどがそろう。脱ぎ着しやすいパターン、気軽に洗濯ができて型崩れの心配が少ない素材、薄くて軽いのに暖かいテクスチャーなどが、自然と手にとりたくなる秘訣と言える。
Text
原料のルーツに迫る
サステイナブルな服
無染色の黒アルパカ100%を古い織機でゆっくりとストール状のフリンジ付きの生地に。染色工程を省くことで、環境に優しく生地のやわらかさは格別。驚くほど軽い。裾フリンジのブラックアルパカシャツ ¥78,000（テクスト | パーキング）
チェックを構成する4色はすべて無染色アルパカ。毛色のバリエを生かしたデザイン。ガンクラブチェックブルゾン ¥108,000（テクスト | パーキング）
アパレルと環境問題との関わりを直視すべきタイミングだと、2019年に〈テクスト〉を始動したデザイナーの石川俊介。以来、ネットで世界各地を自身でリサーチし、現地を訪れて農家との親交を深めつつ原料へのアプローチを続けてきた。今季ふんだんに使用したのは、ペルー南部のアンデス山脈で出合った色とりどりのアルパカ。標高4000m超えの作物が育たない土地に住む人々にとっては生活の糧だ。石川は飼育状況をその目で確かめ、継続的な条件で原毛を買い付け、現地工場の労働環境にまで責任を持つ。服としての最終形は、さまざまなスタイリングに取り入れやすい男女双方に向けたベーシック。デザインすることよりも、サステイナブルな“ものづくり”が矜持だ。
Photo: Kaori Ouchi Text&Edit: Yoshikatsu Yamato
