花の仕事をしていると、小さな驚きや発見がいくつもあって、季節や気持ちにも敏感になる。この連載は、そのきらめきやインスピレーション、自分を取り巻く素敵な出来事を、言葉や写真で書き出す様な、そういうもの。日常とファッションの関係を、ベッドで眠る前の 3 分間に。(photograph by Shun Wakui)
越智 康貴の”花咲くかげに” 07 癒しの香り〈サンタ・マリア・ノヴェッラ〉のソープ

自身の美容にあまり興味が無く、全身をドラッグストアで売っている固形石けんで洗っていた。けれど、あるとき突然、肌がひどく乾燥するようになってしまった。クリームを塗ればいいのだけれど、性格的に絶対続けられないと思ったので、石けんを替えようと友人に相談した。
サンタ・マリア・ノヴェッラの石けんがいいよ。
そう言われ、すぐにインターネットで調べて、銀座の西五番街通りにあるサンタ・マリア・ノヴェッラへ出掛けた。
調べざまに見た紹介文には、こんな台詞が書いてあった。
“世界最古の薬局として 400 年もの歴史を誇るサンタ・マリア・ノヴェッラ”
“癒しに満ちた高貴な香りをご堪能いただき、“フィレンツェ・スタイル”
の豊かな時間を日々の中でお愉しみいただけることこそサンタ・マリア・ノヴェッラの願いであり誇りです。”
“歴史” と” 誇り”、そんな言葉に、すぐさまとりこになってしまう。
お店に入ると、独自の香りに包まれる。
店中の石けんや香水、キャンドルやその他のアイテムの香りが混ざったものだけれど、不思議と調和されていて、リラックスした気持ちになる。
時間の混ざった香り。
石けんを買いに来たのですが。
そう伝えると、いくつもある中から、石けんの並ぶ扉を開けてもらい、好みの香りを聞いてくれた。
重みがあって、オリエンタルな感じが ……。
いくつか勧めてもらったものから選んだのは、サンダーロという香りの石けん。
ウッディーな要素が、気持ちを落ち着かせてくれる。
サンダーロの香りは、ローズと混ぜても調和がいい、と教えてもらった。スパイシーな奥に、ほのかに香るバラの花。
なるほどこれは、新鮮な出会い。
帰って早速使ってみると、パッケージ越しに感じていたよりも華やかな香りに癒される。
身体に残りすぎない、でも微かに香るサンダーロに、自分の敷居が上がった気になり、少し自惚れる。
名前はメンズソープだけれど、女性にも似合う繊細で重みのある香り。魅力の輪郭がはっきりするような。
使っていくうちに、肌の乾燥も気にならなくなった。
遥か昔からあるのに、現代的に再編集されずとも、ずっと魅力的であり続けるのは、なぜだろう。
400年の、定番品。
サンタ・マリア・ノヴェッラ メンズソープ サンダーロ 税抜 2,300 円 www.santamarianovella.jp
フローリスト / 文筆業
フラワーショップ DILIGENCE PARLOUR 運営。 www.diligenceparlour.jp
写真家。
いま一番行きたい場所は中国のハイラル www.shunwakui.com