つい最近まで1990年代いいよね〜、と言っていたような気がするが、今秋冬は断然80年代推しである。しかも、ギラギラの派手一辺倒なやつではなく。自称モード界のご意見番プロフェッサー栗山が、その理由を華麗に解き明かす!
FROM EDITORS 2018年秋冬コレクション vol.2 80年代に注目!

パリコレが始まったばかりの夜、〈サンローラン〉のショーを拝見した。前半は1976年に発表された「ロシア・コレクション」からインスパイアされていたのだが、後半は肩ががーんと張っていて、タイトなシルエットで超ミニのドレスが続いた。
聞けば80年代のコレクションをイメージしたという。そのころのイヴ・サンローランとはこんな感じ。
写真: Fashion Anthology/アフロ
写真: Fashion Anthology/アフロ
上: 1983年春夏オートクチュール 下: 1985-86年秋冬
現クリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロ氏は当時を参照しつつも大いに引き算していることがわかる。そう言えば80年代は盛りに盛っていた。ゴージャスなヘア、濃いメイクにじゃらじゃらのアクセサリーが必須。しかし、今季の〈サンローラン〉のドレスはスパンコールが輝く花柄で、たしかに豪華絢爛ではあるが、ナチュラルなヘアメイクにノーアクセサリー。今80年代のムードを取り入れるなら、このくらいの気持ちで行きたい気がする。
今季は大々的に80年代を謳ってはいないものの、それを感じさせるブランドは他にもあった。
シャネル
バレンシアガ
ジバンシィ
フェンディ
ボックスショルダーだったり、ボディコンシャスだったり、超ミニ丈だったり。シャープなシルエットで強さを感じさせ、身体のラインのみで女性らしさを主張し、装飾やヘアメイクは極力抑えている。
ここのところのストリートブランドブームで、オーバーサイズのスウェットやスニーカーがもてはやされたり、ださいのかどうか判断に迷うような騒がしいものを面白がったりしていたが、それもそろそろシフトチェンジの時期なのかもしれない。強さや女性らしさを静かに表現したい気持ちにそろそろ傾き始めているのではないだろうか。だから80年代の中でもきらびやかな色柄というよりは、まずはパワフルなシルエットに注目すべきなのだ。
ところでこのシルエットを完成させるには、足元はやはりヒールに限る。スニーカーばかり履いていて、急には無理です…とあきらめることなかれ。〈サンローラン〉や〈バレンシアガ〉はじめ、ありがたいことにヒールが太い。とりあえずそれらを買い求め、ボディコンシャスを着こなすために、オーバーサイズでひた隠しにしていたたるんだ身体を鍛えるべし!
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プロフェッサー栗山
独断と偏見による論を自由気ままに披露している自称モード界のご意見番。その自らの好みを貫き通すファッションは周囲に「怖い」と恐れられがち。