22時に開ける冷蔵庫は明日からの元気をくれる宝箱だ。ほんのちょっとしたご褒美が入っている。
自分を励ますために、今日もまた扉を開ける。
バニラアイス+胡桃オイル 西村隆ノ介/くらちなつき「22時の冷蔵庫」vol.1

今日はバニラアイスに決めた。
たまのちょっとしたご褒美、自分を元気にするための処方薬みたいなもの。
仕事もプライベートも落ち着かない時ほど、こういったものの大切さをひしひしと感じる。
自分にとってこの“ちょっとした”にあたるものはなんだろうかと考えると、食べものばかりが思い浮かぶ。しかも夜遅めのだめだだめだと言い聞かせるような時間に食べるとより一層ご褒美感が増す。
やっと部屋で一息つく22時。口寂しさからついつい冷蔵庫の扉を開ける。そんなに大きくもない冷蔵庫なのに、何が入ってたかと中を覗く瞬間はドキドキワクワクする。
今日は特別高いものではなく、どこのコンビニでも買える100円のバニラアイス。
このアイスを一気に高級アイスへと化けさせる秘密のアイテムがある。
[用意するもの]
・バニラアイス
・胡桃オイル…スプーン一杯程度
アイスの種類は乳成分の多い順に「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」とある。
もちろん乳成分が多いほど、ミルク感が濃厚。その分値段は高い。最近はコンビニでも高いものは300円くらいのものまである。
いつも選ぶ100円アイスはアイスミルクかラクトアイス。でも胡桃オイルをかけて楽しむのにはそれくらいがちょうどいい。
フランスオーヴェルニュ地方で昔ながらの石臼を使ってつくられたという胡桃オイル。
百貨店でのフランス展に立ち寄った際に出会ったものだ。
オーナーがたった一人で製造から配達までしているという貴重なオイルは、今まで出会ったことのないくらい香り豊か。
一人でつくっているので、多くの量はつくれない。普段は地元で消費されてしまうオイルを日本でも紹介したいと分けてもらっているそうだ。
そのままパンを浸してもよし。塩と酢を混ぜてドレッシングにしてもよし。ごま油のようにお肉と合わせてもよし。
そして一番のお気に入りがバニラアイスにひと回し。
真っ白なアイスに琥珀色の胡桃オイルがキラキラと垂れる。
この2色が混ざり合う様子は溜息が出るほどに美しい。
ひとすくい、口に含むと一気に胡桃の香りが広がる。バニラも濃厚になった気さえしてくる。
五感全部で楽しむなんと贅沢な時間なのだろう。いつまでも余韻が続く。
ご褒美なのだから夜遅くても気にしない。22時の冷蔵庫は、自分を甘やかし励まして、明日からの元気をくれる宝箱なのだ。
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くらちなつき
広告、ウェブ、雑誌、アパレルなどを中心に活動中のファッションイラストレーター。
主なお仕事にファッションブランド「KEISUKE YOSHIDA」とのコラボレーションなど。
Instagram: @natsuki_kurachi