AAAMYYYさんと、chelmicoのMamikoさん、Rachelさんに新曲「HAPPY」の制作エピソードを聞きました。前編は、それぞれの個性が光る片付けルール。
AAAMYYY × chelmico 新曲「HAPPY」の制作エピソード
収納、トラック、リリックのはなし 後編

それぞれが歩んできた
長い年月の交わり
── AAAMYYYさんが3月にデジタル配信された『THANKS EP』のトップを飾る楽曲「HAPPY」は、chelmicoのお二人が参加されています。お三方が初めて会ったのはいつですか?
R 2017年に私たちのリリースイベント「EPでたよパーティー」に、Tempalayで出てくれたんです。もちろん存在は知っていたのですが、初めて共演したのがそのイベントでした。
A あの時、打ち上げしたんだっけ?
R 和風居酒屋みたいなお店に行ったね。そこで倖田來未の曲のお琴ヴァージョンが流れていたのだけど、私たちもお琴アレンジされるぐらい売れなきゃいけないね、という話をしたのがすごく印象に残っている。
── 10年近く前に知り合い、今回初めて3人で楽曲を制作されたわけですが、どう進めていったのですか?
A 今回のEPが前回から2年8カ月ぶりなんですね。その間、二人出産し育児をしてきたのですが、以前の私のモードは暗めというか、強めというか、社会に物申すといったスタンス。生きづらい世の中へのアンチテーゼみたいな曲が非常に多かったんです。けれど、子どもが生まれたことでもっと楽しくて明るいものを作りたいと切り替わって。私の中のchelmicoのイメージって超元気なんです。ポジティブな強さがある。でも話すと同じ匂いのする人たちだなとわかった。もともとchelmicoのライヴや音源も大好きでいっぱい聴いていて、私にはない、あふれ出る輝きがあると感じていました。なので、明るくなりたい私に一筋の光を入れてほしいなと思って、一緒にやらない?とお願いしたんです。まさかOKしてくれるとは思わなくて。
M そうだったんだ、ありがとう。
A だからみんなのいいタイミングでゆっくり作れたらいいなと思って。そのぐらい二人と一緒にやりたかったんです。

── 曲はどのように作られたのですか?
A chelmicoのことを考えながらトラックを作りました。
R 最初に曲を聴いたとき、ムズっと思いました。どうしようって。やっぱり今までch
elmicoではノったことのないタイプのビートでしたし、メロディも一緒に歌うって言われて、いやいや歌えませんよって(笑)。先ほどAAAMYYYが言ったように、昔の曲はちょっとディープな世界観でしたが、今はすごく開けていて、軸がハッピーという感じだったから、そういう曲で一緒にできるのはうれしいなと思いましたね。
M やっぱりAAAMYYYの声が唯一無二の楽器なので、もうこれだけ聴いていたいと思うぐらい良かったんです。なので、AAAMYYYはchelmicoのどこが好きなんだろう?と考える時間が結構ありました。どういうものを求めてくれているのかな?って。でも考えてみたら、だいぶ前に出会い、お互いいろいろなことを経て、大人になって集合している感じがすごく伝わってきて、それをこのビートにしたんだな、とわかった。ラップパートはchelmicoが作詞したのですが、最初に書き上げるまでAAAMYYYとあまりやりとりをしなかったんです。だからお互いへのお手紙みたいで面白かった。始まる前はいろいろ考えたけれど、今はこれが正解だったなと思います。
── 歌詞の《深みが増していくyears チェルもミコもエイミーも》《疲れた時は速度落として それぞれの道を歩いている》といったフレーズに、積み重ねてきた年月と、みなさんが同じところを見ているなと感じました。
R 最初に「HAPPY」というタイトルだけ聞いていたので、ノリのいい曲調なのかと思っていたら、私たちの歴史や生き方が歌詞に書かれている感じがして。なので、そこに合わせて私たち二人も書いていきました。名前を入れてくれているのがうれしかったです。

── サビの《You deserved to be happy》という歌詞もお三方の関係性を表すと同時に、救われる気持ちになりますね。
M すごくエネルギッシュな歌詞ですよね。
A メロディラインを考えたときに、ふっと出てきたワードだったので、最初からテーマとしてそういうバイブスだったのかもしれませんね。
R 少し話は逸れますが、曲の途中でボーカルが入らない間奏があるんです。私たちがマイクから離れて大きな声でああでもない、こうでもないって喋るんですけど、レコーディング中に疲れてハイになってしまい、何を言っても面白くなってしまって。自分たちのことを「イェイミー」「チェルミーワイ」とか、ふざけて変なワードを言っているので、じっくり聴いてほしいです。ちょうど難しい曲を録った後だったので、はしゃいでいるというか心から楽しかったのを覚えています。
── ミュージックビデオも楽しそうな雰囲気でしたね。
R 実際にすごく楽しかったです。
A あのMVはGROUPNというクリエイティブチームが作ってくれたのですが、友達目線かつ、リリックと曲から内情を読み解いて再表現してくれました。日常的に遊ぶ仲なので、いいスタンスで撮ってくれましたね。セットである美術館に飾られたモニターを見て長い年月を思い、後半では椅子が並べられたアリーナが出てきてみんなに祝福の拍手をされるという流れもいいなと。
M そういったストーリーを含め、大好きなMVになりましたね。

EPに込めた気持ちを
手紙のように送る
── 今回のEPは全5曲収録されていますが、chelmicoのお二人が「HAPPY」以外で好きな曲は何ですか?
R 全部好きですが、強いて挙げるなら、Pecoriくんをフィーチャリングしている「そのまさか」ですね。めっちゃかっこいいのに、「そのまさか」という言葉にユーモアを感じました。大きな声で一緒に歌いたいのと、DJでかけたら楽しそう。
M 私は2曲目の「リラックス」。AAAMYYYと鎮座(DOPENESS)さんのいいところが全部詰まっています。途中に「ありがとう」という歌詞が出てくるのですが、もともとビートがあったものを抜くことにより、ちゃんと「ありがとう」って発声できるようになったという秘話をご本人に聞けたから、一層好きになりました。でも全曲好きです!
──5曲通して聴くと、タイトル含め、「ありがとう」という言葉や、感謝の思いが詰まっているのかなと感じました。AAAMYYYさんがEPに込められたものはありますか?
A 子どもが生まれて、なんとかやってきましたが、今までにない忙しさがあったり、飲みに行ったり、同じように制作できないフラストレーションがあった。でも、やっぱり音楽をやっている時が一番楽しいって実感したんです。制作期間中に大阪のお寺に泊まらせてもらったのですが、家族やみんなのおかげだなとしみじみ思って。助けてくれる人たちなしでは、このEPは完成しなかった。その事実をどうしても反映させたかったんです。だから、トラックもラップもいろいろな人に作ってもらいましたし、とにかくその人たちの力添えがないとできなかった作品だなって。なので、「ありがとう」の気持ちを込めました。私からみなさんへ感謝の手紙ですね。
R うれしいですね。私たちも制作の時期とライヴが被り、バタバタしていたのですが、スケジュールを合わせてくれて。それにありがとう、です。
M 前から絶対にAAAMYYYと一緒に曲を作りたかったんです。今回、歌詞の内容もなかなか触れられないというか、自分ではあらためて考えることがなかった内容だったから、AAAMYYYが引き出してくれたと思っています。本当にありがとう!
ℹ️
『THANKS EP』
chelmico、鎮座DOPENESS、Neetz、Pecori、Yohji Igarashi、MONJOE、Zattaをゲストに迎えた全5曲を収録。chelmicoが参加したリード曲「HAPPY」は、富士山麓で収められた多幸感にあふれたMVも必見。
Photo_Takao Iwasawa Styling_Kan Fuchigami (AAAMYYY), Hideyuki Kanemitsu (chelmico) Hair&Make-up_Yuki Itakura (AAAMYYY), Nozomi Kawamura (chelmico) Text_Mika Koyanagi
