伝統的な技法で形作られる、モダンで端正な竹工芸。大分の作家・安部仁美の作品を、「ギャラリー エスケーパーズ」で開かれる個展で堪能できる。2023年10月6日(金)から15日(日)まで。
💅🏽BEAUTY
モダンな感性が光る安部仁美の竹工芸
アートでもあり道具でもある作品が個展『エスケーパーズ』に並ぶ

ぴんと伸びた竹ひごが、きっちりと丁寧に編まれている。緊張感が漂うが、天然素材ならではの柔和さもある。美しい網目が連なって描くのは、無駄を削ぎ落とした洗練のかたちだ。
大分県日出町で制作活動を続ける安部仁美の作品は、凛と佇む。室町時代から伝わる技法で完成されたかごや物入れには、フリンジのように垂れ下がる竹ひごがあしらわれていたりもする。丸石を竹ひごで包んだ、伝統的なカテゴリーには当てはまらない作品も。
長い歴史が育んだ形式の奥に、ひとさじのモダニティを忍び込ませる……その感性は、〈メゾン マルタン マルジェラ〉の旗艦店立ち上げチームの一員だったという経歴を持つ彼女ならではのものかもしれない。
渋谷の「ギャラリー・エスケーパーズ」で開かれる個展『エスケーパーズ』では、用の美とアート的美を併せ持った作品が並ぶ。竹工芸は、竹という素材の制約をリスペクトしながら、本来の形から解き放っていく作業だ。自然から「エスケープ」した竹をクラフトに昇華することでもある。
竹割りや竹ひご作りといった工程も、安部は日出町のアトリエで自ら行っているという。従来よりもひごの幅を狭くしたり、厚みを増したりと、細かな工夫を加えることもある。そういった姿勢と技術のすべてが、作品の持つ吸引力につながっている。
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【安部仁美展ーESCAPERSー】
会期_2023年10月6日(金)〜15日(日)
時間_13:00〜19:00(土日祝は11:00〜18:00)
*火水休廊
会場_GALLERY ESCAPERS
住所_東京都渋谷区神宮前5-3-3
Text_Motoko KUROKI