クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は、vol.100 メッセージカード。ニューアルバムについてのインタビューはこちら。
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.101
私の住所
vol.101 私の住所
お正月はギリギリまで迷ったけど福岡の実家には帰省せず、東京の自宅でゆっくり過ごした。家族と食べるお節も、気心知れた仲間と顔を赤らめながらお酒を酌み交わすお正月も良いけれど、1人で過ごすお正月も気ままでいい。リビングで楽しみにしていたドラマや映画、アニメを心ゆくまで観て、好きな時に食べ、好きな時に眠り、好きな時に起きる。パソコンやスマホも気にしなくて良い。お正月はみんな休んでいるから、余程緊急でない限り仕事の確認メールや電話も来ない。
この活動をしていると、この数ヶ月本当に休みがないなぁ!なんてことも多いけど、アルバムを完成させた後やツアーを完走した後には、まとまった休みを取らせてもらったりもする。その日数にもよるけれど、実家に顔を出したり、思い切って海外に足を延ばしたり。だけどあくまで休んでいるのは“私”であって、世の中はしっかり機能していてマネージャーをはじめ関わっているスタッフの皆さんが働かれている。だから休み、と言いつつ手荷物にパソコンはマストだし、メールやメッセージのやり取りも普段通り。スマホの世界時計で日本が今何時か確認しつつ、モロッコの青い街、シャウウェンのカフェでパソコンを開いていたこともあった。
だけど、長く海外に滞在しているとその高揚感と爽快感の間で、ふと説明しがたい気持ちになることがあった。生まれてはじめて来た国の固いベッドで眠りに落ちるまでの数秒。灼熱の太陽がジリジリとビーチを焦がす蜃気楼をパラソルの下から見つめる瞬間。暗い店内のパブから見えた表の道を行く人たちが皆、私とは本当に違う文化を持っているのだと明白に知る時。人と人なんて、本当にいつ会えなくなってもおかしくないんだってことが胸をいっぱいにして。この国にもこんなに沢山の人がいて、だけど私はただの旅行者でこの人たちと深く関わることはない。もう会うことも、きっとない。今この瞬間私はここにいるのに、誰とも繋がれない。心細くて泣き出したいような、でも帰る場所に帰りたいと心から思えていることの安堵と。
だから、日本でのことが遠く幻に感じてしまう時に仕事のメールを返すのは、全然悪くない。ちゃんと私に私が何処の誰なのか、何をしているのか思い出させてくれるから。
よくもまぁお正月休みの話から、こんなセンチメンタルなところに。私っぽいけど、なんて思いながら綴ったエッセイ。もう2月だけれど。改めまして、今年もどうぞよろしくお願い致します。
Text:Leo Ieiri Illustration:chii yasui