型破りな刑事・志村(高橋一生)と犯罪コーディネーター“インビジブル”ことキリコ(柴咲コウ)がタッグを組んで凶悪犯を追い詰める『インビジブル』(TBS)。3話では二人をよく思わない捜査一課の後輩・磯ヶ谷(有岡大貴)が強く絡んできて……。ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミが振り返ります。2話はこちら(レビューはネタバレを含みます)
考察『インビジブル』3話。Hey! Say! JUMP有岡大貴の不遜な後輩感がイイ!

有岡大貴が見せるダメな後輩感
仕事をしていると、ちょっとした気の緩みが思いがけず大きなミスにつながってしまうことは、ままあるものだ。そこに、仕事の内容とは直接関係のない同僚やら先輩やらへの気持ちが少なからず影響しているというのも、なんだか身に覚えがある。『インビジブル』3話は、個性的な殺人犯を“インビジブル”(柴咲コウ)の協力のもと追い詰めるというドラマティックな大枠の中に、警察内部の人間関係というリアリティが入り込んだ回だった。
殺人を犯しては遺体を装飾し展示する、“演出家”と呼ばれる凶悪犯(要潤)。犯罪コーディネーターの“インビジブル”キリコは、あえて志村(高橋一生)を演出家の犯行現場に置き去りにして犯人の疑いをかけ、署名性の高い犯行を行う演出家のプライドを刺激する。防犯カメラによって志村への疑いはすぐに晴れるが、キリコの作戦に乗った志村はあえて自分の逮捕を報道させ、演出家を煽って次の犯行をより早く、派手にするよう促す。
キリコの情報を元に張り込みをする捜査一課の面々。磯ケ谷(有岡大貴)はもともと、志村とキリコがつながっていると疑う猿渡(桐谷健太)を慕い、志村を敵視していた。「そう(インビジブルを信じて大丈夫と)思っているのは誰かさんだけだと思いますよ」と志村に直接噛みつき、「なんでこっちまでインビジブルに振り回されなきゃなんないんだよ、あいつ犯罪者だろ」と張り込み中も不満を隠さない。そしていざ演出家が現れたとき、一番近くにいたはずの磯ケ谷は無線を外してコンビニでトイレを借りていた。結果、現場への到着が遅れ、被害者は殺されてしまった。尊敬できない先輩への不遜な態度、緊張感なくコンビニで買ったものを持って歩いている姿、いざ死体を目の前にして腰が引けてしまっている情けない声。有岡演じる磯ケ谷のダメな後輩感は、いつも余裕たっぷりに見えるキリコを苛立たせるのに充分だ。
決して後輩を見捨てない志村
なんとか再び演出家のしっぽを捕まえたい志村は、自分が犯人に仕立て上げられたときにかいだ甘い匂いから、演出家が常用していたドラッグにたどり着く。そして逮捕されているテイの志村と”民宿”に閉じ込められているキリコ、本来外出が禁止されている二人がドラッグの売人の元に行き、顧客リストを買い取る。こういうシーンで突飛なまでに鮮やかな衣装が似合う柴咲コウも、ミニマムな動きで強さを見せる高橋一生も、見ごたえがある。リストに名前が載っている人間を一人ずつ殴って問い詰めるのはなかなかに原始的で手間のかかるやり口だけれど、直情的な志村の性格が現れているとも言える。
志村は後輩を見捨てない。甘い匂いを思い出したときも唯一演出家に直接接触した磯ケ谷に話を聞き、リストの電話番号から住所を割り出す仕事もあえて磯ケ谷に頼んでいる。そして「自分のケツくらい自分で拭かせてください」という磯ケ谷を自分に合流させ、演出家の逮捕までさせている。そもそも、3年前に目の前で後輩を殺した犯人を見つけるために違法な捜査でもなんでもやっている男だ。少しでもその事件の情報を得るためにインビジブルに協力しているところもある。もともと面倒見がよく、情の強い人間なのかもしれない。
ドラッグ常習者を一人ひとり追い詰め、とうとう演出家にたどり着く志村。キッチンにある小麦粉を使った粉塵爆発(2話)といい、今回のガレージのロープとチェーンを使いプールで相手を感電させる仕組みづくりといい、その場にあるものを使って敵と対峙する姿には、ふとマンガ『MASTERキートン』(浦沢直樹)を思い出す。普段は容赦なく素手で相手を殴るような志村が、クライマックスで知識と能力を使うそのギャップにしびれる。そして今回の見どころはなんといっても犯人に引きずり込まれたプールから通電直前に飛び出るその姿!
志村と協力し、志村を信じて演出家を逮捕した磯ヶ谷は、この事件でだいぶ成長した。この先、彼が志村のよき後輩になるのだろうか。そして一度は近づいたと思われた志村とキリコとの距離は、約束していた3年前の事件の手がかりが演出家の家からは得られなかったことで再び離れてしまったようにも見える。キリコの目論見と、彼女が3年前の事件についてどこまで知っているかはまだ謎のままだ。
脚本: いずみ吉紘
演出: 竹村謙太郎、棚澤孝義、泉正英
出演: 高橋一生、柴咲コウ、有岡大貴、堀田茜、原田泰造、桐谷健太 他
主題歌: Dragon Ash『Tiny World』
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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