生誕80周年を迎えたフランス人映画監督のクロード・ミレール。それを記念して、2022年9月23日(金・祝)から「新宿シネマカリテ」「角川シネマ有楽町」にて、名作『なまいきシャルロット』、日本劇場初公開の『勾留』、『伴奏者』、『ある秘密』の4作品が上映される。
ヌーヴェル・ヴァーグの正統な後継者と呼ばれるフランス人監督のクロード・ミレール映画祭が開催

1942年2月20日、ユダヤ人の両親のもと、ドイツ占領下のフランス・パリで生まれたクロード・ミレール。幼い頃から映画に興味を持ち、多くの巨匠たちを輩出した名門映画学校IDHEC(フランス高等映画学院、現FEMIS)に進学。足繁く映画館に通う彼が特に好んだのはイングマール・ベルイマンやアルフレッド・ヒッチコックの作品だったという。何度も繰り返し観て、全てのシーンを暗記していたのだそう。それほど、彼は映画に深く親しんだ。
初めて実践的な映画制作の経験を積んだのは、兵役中、フランス軍の映画部門でのことだった。その後、フランスの著名な映画作家の助監督になり、ロベール・ブレッソン『バルタザー ルどこへ行く』(66)、ジャン=リュック・ゴダール『ウィーク エンド』(67)、ジャック・ドゥミ『ロシュフォールの恋人たち』(67)など、名だたる作品に携わる。最も影響を受けたフランソワ・トリュフォーの作品では、『暗くなるまでこの恋を』(69)から『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73)まで製作主任を務めた。
自身の作品を撮り始めたのは34歳。監督デビュー後、圧倒的な手腕を示し、“ヌーヴェル・ヴァーグの正統な後継者”と呼ばれたミレールは、巧みな演出術で、俳優たちの魅力を最大限に引き出した。
長編デビュー作『いちばん上手い歩きかた』(75)では、セザール賞6部門(主演男優賞、監督賞、作品賞など)にノミネート。1985年、シャルロット・ゲンズブールを主演に迎えた『なまいきシャルロット』で新境地を開く。短編を含む20本の映画を世に残し、2012年にミレールは70歳で生涯を閉じた。
そして、ミレールの生誕から80周年を迎えた今年、伝説の名作がHDリマスター版で蘇る。代表作の『なまいきシャルロット』をはじめ、『伴奏者』、『ある秘密』、そして日本劇場初公開となる『勾留』の4本の上映が決定した。
ミレールが好んで撮ったのは、繊細でありながらエネルギッシュに生きる若者の心情や、人間の心に潜む理屈では割り切れない複雑な感情。周りとの関係性や状況によって揺れ動く人間の心理を独自の作家性で描きながら、観客との共感を常に意識しストーリーを作り上げてきた。映画を誰よりも知り尽くしたミレールの手腕を、この機会にスクリーンで体験してみては。