写真ユニットSystem of Cultureが個展『そして、すれ違った Exhibit 5』を開催する。2023年4月14日(金)〜6月18日(日)、場所は京都・「BnA Alter Museum」。「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭サテライトイベントKG+」にも参画する。
System of Culture5度目の個展。写真による物語生成の、緻密で不思議な一瞬に酔う

カラフルなグミがいくつも貼り付いた白いマグカップを写したカット。小松利光さんと佐々木祐真さんの二人からなるSystem of Cultureを知ったのは、インスタグラムのアイコンにもなっている一枚“Gummy bears on a mug” (2021)がきっかけだったように思う。
美大の同級生同士で写真を始めたのは、2017年のこと。(過去インタビューはこちら) 被写体はモノ、人、光景などさまざま。二人が撮るのは、なにかの一場面や一瞬を切り取った「ような」写真。でも、情緒的に日々を切り取るというわけではなく、あくまでセッティングされた世界だ。パッと見ると軽いスナップのようにも見える。そのカテゴライズされなさは、二人の狙うところでもあり、ジャンル分けが明確なイメージが溢れる今の世の中で、貴重な存在でもある。
こんなシーンを撮ってみよう、これを撮影するとしたらどうするか…そんなアイデアから小物を揃え、舞台を整えて、シャッターを押してみる。こうして「作られた」物語が写される。だから、ときには、二人の写真は映画やドラマのスチール写真にも見える。演劇のセットのような印象を抱くことすらある。同じような絵面でも、フィクションということを感じて楽しむのと、偶然に切り取られたものを楽しむのとではまったく質が違う。
主なインスピレーション源は映画やドラマ、それに絵画。とりわけ、技法やフレーミングについては、絵画から多く本歌取りをしている。たとえば、使い終わったティーバッグが並べて置かれたさまを写したカットは、ものを見た時の印象を画面に再生しようとしている。その時の感情、いや感覚が、視覚から呼び起こされるように。その試みは、印象派絵画が表現しようとしたものに通じる。
全体的に彩度が高く、奥行きはなくフラット。だけど、緻密に、そして無理なく構築されたフレームのなかに、わざとらしさはない。出来上がった写真たちはとことん「狙っている」感から逃げおおせている。ふとこぼれ落ちた日常、ちょっと目に止まった気になるシーン。そんなミクロな世界がフィクションとして生成されているのが、System of Cultureの作品だ。
写真は記憶を写すものか、印象を移すものか、構図を探るものか…。いろいろな意図がありえて、ユニットはあちらこちらへと触手を伸ばす。本展では新作群が発表され、展覧会というまとまりの中でイメージ同士のいくつかの接続可能性を感じることもできる。彼らの写真はそこに写っていない前後の瞬間へと思考を誘い、私たちはそのファンタジーを楽しむと同時に、写真本来の役割をも考えていくことになる。