長年数々のハイファッションブランド、ファッション雑誌で多岐に渡り活動してもなお、彼女独自のスタイルはどこで作品を見ようとも揺るぎなく唯一無二の存在である。その存在は、ファッションの領域だけではなく、作家としても認められている。現在はオランダを拠点にしているが、彼女の色鮮やかな色彩を特徴とした作品のほとんどが、自身の故郷であるアフリカ・ケニアでの記憶から影響を得ているのは周知の通りだろう。モデルも主に黒人を起用し、ユニークな構図と豊かなカラーパレッドを自由自在に操る。
Mirepoix
2017
Viviane Sassen ©Viviane Sassen, Courtesy of G/P gallery
サッセンのミューズである女性・Roxane Dansetを5年間以上撮影し続けているシリーズ「Roxane」をはじめ、サッセンの被写体の多くは女性。
今回出版した新作写真集『of mud and lotus(泥中の蓮)』も女性本来の「豊かさ」を追求している。タイトルのことわざー汚れた環境にいてもそれに染まらず清く正しく生きる姿—からインスピレーションを受けた新作には、文字通り妊娠した女性の身体や出産を想起させるコラージュイメージなどが並んだ。また具象的イメージのほかにも、みっしりと群れた菌や胞子など抽象的な表現では身体の細胞の増殖を思い起こさせる。ミルク、卵、花、風船など有機的な素材さえもサッセン独特のコラージュや色彩感覚の手にかかれば、たちまち女性の身体の豊かさとして受け取れる新たなイメージへと生まれ変わっていた。
HCG
2017
Viviane Sassen ©Viviane Sassen, Courtesy of G/P gallery
Russula Coerulea 2017 Viviane Sassen
©Viviane Sassen, Courtesy of G/P gallery
身体や抽象的な素材をあくまでも何かの形や曲線として捉えるその審美眼もケニアでの思い出が影響していることを「It’s Nice that」のインタビューで語っている。急性灰白髄炎(ポリオ)の病院の隣に住んでいた時の体験から「子供たちがとても不思議な奇形だったことを覚えてる。ポリオにかかった友達とジャングルジムのてっぺんに登っている時にお互いの手首の違いを見比べて驚いたわ。お互いの身体に驚かされたの。子供だったから当時は全然それが何か深刻な病気だなんて予想も付かなかったけど、当時の私にとってその友達の身体は美的感覚として興味を惹かれる出来事だった。」続けて自身の身体についても語る「幼い頃とても細い体型だった。特に食生活に問題があったわけじゃないんだけど、その後短期間で身長が伸びてもそのまま痩せ型の体型だった。それで時々鏡ごしの裸の自分に驚かされていたの。”なにこれ!”って感じるように身体の形・曲線を不思議に思ってたわ。」
Malibu
2017
Viviane Sassen ©Viviane Sassen, Courtesy of G/P gallery
Nepenthes Alata 2017
Viviane Sassen ©Viviane Sassen, Courtesy of G/P gallery
ケニアでの鮮明な体験から生み出されるサッセンの鮮やかな色彩と審美眼によって、多層的に表現される作品は、鑑賞者に潜在的な美しさを発見させるきっかけにもなる。それはまるでサッセンが幼少期に感じた驚きとも似ているはず。
G/P Galleryにて写真集から厳選した24点を展示し、会期中にはサッセンの来日も予定している。
ヴィヴィアン・サッセン “Of Mud and Lotus”
会期 : 2017年10月6日(金)- 11月25日(土) 12:00-20:00 (最終日は 17:00まで)
場所 : G/P gallery (150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 2F
)
トーク・イベント & ブック・サイニング
登壇者:ヴィヴィアン・サッセン
新刊「Of Mud and Lotus」の発行にあわせて、ヴィヴィアン・サッセンによるトーク・イベント、及びブック・サイニングを開催予定です。
*都合により作家の来日が、11月中旬になる見込みです。詳細につきましては、追ってウェブサイトにて、ご案内させていただきます。