2023年10月5日(木)から10月30日(月)まで、京都・堀川新文化ビルヂングの開館2周年を記念し、同館ギャラリースペース「NEUTRAL」にて、糸にフォーカスした展覧会『KYOTO ITO ITO Exploring Tango Threads−理想の糸を求めて』を開催。本展をディレクションしたデザインスタジオ・ウィープラスと、テキスタイルデザイナー須藤玲子さんの思惑とは。
京都の堀川新文化ビルヂングで“糸”の魅力に迫る展覧会が開催
伝統技術を継いだ職人の糸あしらいに感動!
須藤玲子さん率いる「NUNO」による、布がもつ魅力に焦点を当てた巡回展『nuno nuno』(2021年)、『KYOTO nuno nuno』(2022年)。この展示デザインを担当したウィープラスの林登志也さんと安藤北斗さんは、これをきっかけにテキスタイルの奥深さにすっかり魅了されてしまったと話す。
「『NUNO』は、透けるもの、キラキラしたもの、ボロボロなものなど、実験的なテキスタイルを数多く作っているんです。その多種多様なテキスタイルのもととなるのが“糸”であることから、“糸”をテーマにした展覧会の構想が芽生えました」(林さん)
そこで2人は、絹織物の産地である京丹後を訪れ、養蚕・製糸・製織をはじめとした生産現場を見学。10月5日から始まる『KYOTO ITO ITO Exploring Tango Threads−理想の糸を求めて』では、彼らが実際に見て、触れて、感じた、手仕事の素晴らしさを追体験できる内容となっている。
「生糸の種類・撚り方・織られ方にはバリエーションがあり、各社がそれぞれの強みをいかしてオリジナルのテキスタイルを目指していることに感動しました。同時に、京丹後エリアの層の厚さも感じました」と林さん。
実は京丹後は、須藤さんのクリエーションを支える産地の一つなのだそう。
「京都では、伝統をベースに、現在に至るまで染織技術を発展させてきました。職人たちには、一枚一枚、手作業で仕上げることを厭わない心意気があります。だからこそ、自由度が高く、ムラ染めや飛白かすり染め、あらゆる素材をマイクロスリットするなど、先端技術への展開も可能。歴史に裏付けされた技術こそ、チャレンジの源なのです」と須藤さんは話す。
会場入り口では、ルーペが渡される。「糸をミクロの世界で体験したり、実際に触れて違いを感じたり。五感で糸を感じてもらいたいです」との林さんのおすすめに従って、ぜひ、ルーペ越しに糸をジッと見つめてみよう。美しいテキスタイルの奥にある、京丹後ならではの“糸あしらい”にハッとするはずだ。
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ウィープラス
リサーチと実験に立脚した手法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ。林登志也(左)と安藤北斗(右)により2013年に設立。日々の研究から生まれた自主プロジェクトを国内外で発表しており、そこから得られた知見を生かして様々な企業や組織のプロジェクトを手がける。Dezeen Awards / Emerging Design Studio of the Year Public Vote(英)、EDIDA / Young Designer of the Year Nominee(伊)、日本空間デザイン賞金賞他受賞多数。作品はドイツのVitra Design Museumなどに収蔵されている。
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須藤玲子
1953年茨城県石岡市生まれ。株式会社「布」代表。東京造形大学名誉教授。日本の伝統的な染織技術から現代の先端技術を駆使し、新しいテキスタイルづくりを行う。作品は、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ロサンゼルス カウンティ美術館、ビクトリア&アルバート博物館、東京国立近代美術館など、世界の名だたるミュージアムに収蔵されている。2022 年第11回円空大賞受賞。主な書籍に『日本の布(1〜4)』(MUJI BOOKS 2018, 2019)、『NUNO : Visionary Japanese Textiles』(Thames & Hudson 2021) など。
撮影_林雅之
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【KYOTO ITO ITO Exploring Tango Threads−理想の糸を求めて】
会期_2023年10月5日(木)〜10月30日(月)*会期中無休
開館時間_10:00〜19:00*10月18日(水)は〜18:00
会場_京都市上京区皀莢町287 堀川新文化ビルヂング
Tel_075-431-5537(NEUTRAL10:00〜19:00)
*入場無料
*10月18日(水)19:00〜20:30、トークイベント「理想の糸を求めて」を開催(要申し込み)
Text_Ayako Tada