2023年11月23日(木・祝)より、織物産地・富士吉田市にて、「布」に焦点を当てた芸術祭『フジテキスタイルウィーク』が開幕した。3回目を迎える今年は南條史生が総合ディレクターを務め、「糸への回帰」をテーマに展開。国内外11組の作家が集まる「アート展」、伝統織物の甲斐絹(かいき)を紹介する「デザイン展」の2部構成で、糸がものづくりの原点であり、素材として新たな可能性も秘めていることを伝える。また、富士山の世界文化遺産登録10周年を記念した特別企画『フジテキスタイルウィーク 2023 フォトコンテスト』も行われる。
『フジテキスタイルウィーク』で織物の多様な表現を探る
富士山麓を舞台に世界の6の地域と国内から11組のアーティストが参加
テキスタイルとアートの融合を試みる祭典『フジテキスタイルウィーク』。今年のテーマ「糸への回帰」を表現する作品が、富士吉田市下吉田本町通り界隈に設けられた複数の会場に展示される。
「布の原材料である糸が、どこでどのように作られ、それが環境にどのような負荷をかけ、社会にどのようなインパクトを与えているのか、あらためて見つめ直す時代となっています。だからこそ、『糸』について再考したいと考えました」と総合ディレクターの南條史生。
そこで「アート展」では、糸を想起させる作品やプロジェクトを紹介する。「国際的なアーティストや、今後の活躍が期待される若手作家が集まります。その表現形態は、刺繍からファッション、写真など、さまざま。空き店舗をそのまま使った大胆なインスタレーションもありますよ」と南條は話す。
参加アーティスト11組のなかでも、見逃せないのはネリー・アガシ。山梨県産業技術センターの技術提供を受けて作ったテキスタイルをもとに、本展のために《mountain wishes come true》を制作した。展示会場となるのは、かつて織機の部品などを扱った商社の工場跡地「旧山叶」。アガシの芸術的ビジョンと地元の特性が混ざり合った巨大作だ。
ネリー・アガシ 《mountain wishes come true》
シカゴを拠点に活躍するネリー・アガシは、日本で初となる大型インスタレーション《mountain wishes come true》を「旧山叶」にて披露する。
この「旧山叶」の元事務所では、顧剣亨の作品が展示される。複数の写真データをピクセルごとに編み込む独自の手法で、富士吉田市が歩んできたあらゆる時代の地図をレイヤード。生地にプリントした《Map Sampling_Fujiyoshida》を披露。
顧剣亨 《Map Sampling_Fujiyoshida》
独自手法・デジタルウィービングにより、複数のイメージが重なり合う写真作品を発表する顧剣亨。《Map Sampling_Fujiyoshida》では、富士吉田市の地図を編み込み、2枚の透け感のある生地にプリント。これにより、立体感のあるイメージが浮かび上がる。
そのほか、作家と地域との交流から生まれた作品がたくさん並ぶ。市内の機屋から収集したB反(傷などの都合により一般に流通しない布)を使ったジャファ・ラムのインスタレーション《あなたの山を探して》、「旧山叶」で使用されていたユニフォーム等をもとにした池田杏莉の彫刻《それぞれのかたりて / 在り続けることへ》など、見応えあり。
「富士吉田を取り巻く環境と、アーティストたちの自由に飛翔する創造性の発露。こうしたサイトスペシフィックな対話を楽しんでいただきたいです」と南條。
一方、「デザイン展」では、この界隈で100年前に生産されていたものの、現在では幻のテキスタイルとなっている「甲斐かいき絹」に着目。数百点を超える資料の中から厳選された生地や羽織、当時の道具を集めたアーカイヴが並ぶ。この技術が誰によって、どのようにして形成され、なぜ失われてしまったのかに迫る内容に。写真家・川谷光平や詩人・水沢なおが、工房の職人など甲斐絹生産の背景を想像し、綴った物語も必読だ。
ちなみに、会場が集まる本町通りといえば、富士山に続くように延びていることから、通称“富士みち”とも呼ばれるビュースポット。そこで、今回は「富士山借景」「富士吉田の街並み」をテーマにしたインスタグラムから応募できるフォトコンテストも開催。入賞すると地元テキスタイルブランドの人気アイテムや、市内の宿の宿泊券などがもらえるとのこと。それに伴い、普段は立ち入ることができない建物の屋上が開放される。貴重な絶景ポイントから日本最高峰が拝める、またとない機会をお見逃しなく。
ℹ️
【フジテキスタイルウィーク 2023】
会期_2023年11月23日(木・祝)〜12月17日(日)
休館日_月曜
時間_10:00〜16:00*各会場への入場は15:30まで
会場_山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域
入館料_一般¥1,200
【フジテキスタイルウィーク 2023 フォトコンテスト】
テーマ_「富士山借景」または「富士吉田の街並み」
応募期間_第2期〜2023年12月17日(日)
*第1期は終了
応募方法_
①インスタグラムで「@fujitextileweek」と「@city_fujiyoshida」 の両方をフォロー。
②富士吉田市内から、「富士山借景」または「富士吉田の街並み」をテーマにした写真を撮影。
③キャプション部分に「#fujitextileweek」または「#フジテキスタイルウィーク」と 、第 2 期応募「#ftw2023photo02」をつけて投稿。
*1人につき何作品でも応募可能
*結果は公式インスタグラムおよび公式ホームページにて発表
【アーティストトーク】
「テキスタイル×デジタルファブリケーション」
佐野虎太郎(Synflux COO/CDO、スペキュラティヴ・ファッションデザイナー)×八木毅(FUJI TEXTILE WEEK事務局長)× 金岡大輝(FabCafe Tokyo)
日程_12月9日(土)
時間_11:00〜12:00
会場_FabCafe Fuji
住所_山梨県富士吉田市下吉田3-5-16
「2人の歌人、対談、布の短歌を解説」
伊藤紺(歌人)× 木下龍也(歌人)
日程_12月9日(土)
時間_16:00〜17:30
会場_SARUYA Artist Residency
住所_山梨県富士吉田市下吉田3-28-8
Text_Ayako Tada