写真家・奥山由之氏の個展『As the Call, So the Echo』が竹芝のGallery 916で開催中だ。
2年以上にわたり、ある村で暮らす友人家族やその周辺の人々の情景、そして死生観を思わせる抽象的なイメージを撮りためた約70点に及ぶ作品は、静謐ながらも、生きること・撮ることの純粋な悦びに満ちている。
「とても大切な作品を作ることができました」と奥山氏が語る新作の初日レセプションにお邪魔しました。
奥山由之写真展『As the Call, So the Echo』で見つめる“写真の持つ気配”と生きるということ

「2016年に発表した『BACON ICE CREAM』から2ヶ月ほど、写真を撮っていなかったんです。久々に撮ったのが、第二章の写真。長野に移住した友人を訪ねた時、自然とシャッターを押していました」
そう振り返る第二章は、ある時から止まってしまった“写真の持つ気配”を再生させるきっかけとなった。
新しい命の誕生、お神輿を担ぐ男衆、お祭りの高揚感、赤ちゃんの沐浴、おかずいっぱいの食事、変形したガードレール……などが、瑞々しく、何の衒いもなく収められている。そこに当たり前に存在するハレとケ、生と死を優しく包み込むように。
「今まで撮っていたものとは違い、あまり考えないでシャッターを押せました。まったく作為的ではないんです」という言葉通り、そこには写真の原点と言えるプリミティブな衝動と強さがある。そして、彼の新しい表現の萌芽も。
全四章から成る今展は、抽象と具象で表現されている。ファッションショーの映像を切り取った第一章から始まり、第二章、球体や循環を想起させる第三章、そして再び長野の暮らしを収めた第四章で結ぶ。それぞれの章の撮影には約半年の期間が空いているという。
「生活や生を感じ取ってもらえたら」と奥山氏。
「映像の中にすべての答えがあります」と語る、併設のスペースで上映される映像作品もお見逃しなく。
また、ギャラリーとしては珍しく、日中はほんの少し自然光が入るため、昼と夜とでは違う感想を抱くかもしれない。機会があれば異なる時間帯に訪れるのもおすすめだ。
併設のGallery 916 smallで上映されている映像作品。美しい花々や樹木などの自然や、そこに暮らす人々の営みが、光いっぱいの希望と繋がる。
同名の写真集が赤々舎より12月10日(日)発売予定。同日15時より、写真評論家・飯沢耕太郎氏をゲストに招き、トークセッション&ブックサイニングを開催。
『As the Call, So the Echo – Yoshiyuki Okuyama』
会期: 2017/11/18(土)〜2017/12/24(日)
会場: Gallery 916
住所: 東京都港区海岸1-14-24 鈴江第3ビル 6F
開館時間: 11:00〜20:00(平日)/11:00〜18:30(土日、祝日)
入場料: 一般800円、大学生・シニア(60歳以上)500円、高校生300円、中学生以下無料
月曜休館
お問い合わせ: 03-5403-9161 / gallery916.com/
奥山由之
おくやま・よしゆき>>1991年生まれ。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。2016年には『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。写真集はその他に『THE NEW STORY』『march』『君の住む街』など。また、GINZA 2月号(1/12発売)誌面にて発表する作品を鋭意制作中。こちらもお見逃しなく!
Photo: Celine O’Connor Text: Mika Koyanagi