世界中にファンを持つオンラインブックショップ「IDEA」。“WINONA”や“I DON'T WORK HERE”“The All England Techno Club”といったちょっとおかしくて楽しいワードがあしらわれたキャップやTシャツで、その名を知る人もいるだろう。これまで主に「ドーバー ストリート マーケット」にショップ・イン・ショップを構えてきたが、2024年2月、ロンドン中心部のSOHO地区に独立した実店舗をオープン。そのニュースを聞き、実際にお店を訪ねてみた。
ロンドンの新名所。「IDEA」の実店舗がSOHOにオープン。
レアなアート本からユーモラスなマーチまで手に入る。
地価の高いエリアのため、小さな一室かと思いきや、「IDEA」のショップ、オフィス、配送作業所は建物の3フロアにまたがっている。迎え入れてくれた共同設立者のデヴィッド・オーウェン(David Owen)は、「ここにはかつてエルトン・ジョンが事務所を構えていたんだよ」と、その歴史を教えてくれた。実は、この建物はずっと以前より「IDEA」の拠点だったそうだ。「保管場所として、ある部屋の棚の半分を借りて、ヴィンテージブックを並べたことから始まった。棚のもう半分は、誰かのポルノ雑誌で埋められていたよ(笑)」 (*かつてSOHOは性風俗産業が栄えていた)
アートブックのコレクターであった写真家のアンジェラ・ヒル(Angela Hill)とデヴィッド(ふたりはパートナーだ)は、今はなきパリのショップ「コレット(colette)」からの誘いで「IDEA」を始めた。オンラインショップと並行して、彼らは予約制のショールームに顧客を招いた。ビジネスが拡大するにつれ、建物内の他の部屋もじわじわと借り進め、今では4階建てのビルの地上階を除いた3フロアが「IDEA」のものに。
店は通りからは見えず、ショップに入るためにはチャイムを鳴らす必要がある。「IDEAをめがけてくる人しか入れないのはいいこと」とデヴィッドは言う。希少で高価な印刷物を扱う以上、一種のフィルターは必要なのだという。実際、そのおかげで顧客ひとりひとりと接する時間も増える。「お互いに顔を見て話しながら本を紹介できるのは楽しいね。1冊の本に1000もの会話のきっかけがあるから、話にのめり込みすぎちゃって大変ではあるけれど」
Photo&Text_Ko Ueoka