アーティストのMVから「歌ってみた」まで、数えきれないほど存在する音楽動画。“出演者は全員自分”な歌い手に注目して、独自路線を爆進中の二人を紹介。
一人何役?自宅録音の桃源郷
画面いっぱいに広がる
ひょうろくワールドがクセになる
🗣️
ひょうろく
1987年鹿児島県出身。お笑いコンビ「ジュウジマル」を解散後、俳優、タレントに。尊敬するミュージシャンは浜田省吾。
お笑いコンビ「さらば青春の光」の公式YouTubeや、バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』への出演で一気にスターダムを駆け上がった謎の人物、ひょうろく。彼が自身のYouTubeチャンネル『もち、ひょうろく』でライフワークのように続けているのが“1人で歌ってみた”シリーズだ。「ゴスペルをしてみたかったのですが、誘える人がいなくて。自分だけでやるしかないかぁ、と始めてみました」とひょうろくさん。3年前にエルヴィス・プレスリーの「Can’t Help Falling in Love」を一人三役で歌って以来、ヴォーカルはもちろん、ベース、コーラス、ボイスパーカッションなど、すべてのパートを自身が務める動画を50本以上公開している。マイケル・ジャクソンに中国の女性グループ「女子十二楽坊」、ライオン・キング、アデル、ゴスペラーズ、レディー・ガガとジャンルは幅広く、タンクトップを着た彼が一画面に何人も並び、さまざまな表情を見せる姿はとんでもなくシュール。「歌ってみたいという直感に従って作っているのですが、耳コピの能力は兼ね備えていないので楽譜がないと断念することもあります」。面白いだけでなく編集技術や歌声が素晴らしく、ついつい見入ってしまう。制作期間は最短3日、長くて3カ月ほど。動画編集の際はPCソフト「DaVinci Resolve」を使用しているという。これから作ってみたい動画は何か聞くと「いつかチャペルで撮影をしたいです。そのときは一人百役に挑戦します!」とのこと。ぜひ実現してほしい!
メンバーはたった一人!?
すべてをこなす宅録バンド
🗣️
TOM-ATOM
トム・アトム>> 2005年生まれ、神戸市出身。「ひとり宅録バンド」として作詞・作曲、演奏、歌唱、MIX、動画編集、宣伝までを自身で手がける。
ビートルズのパロディ一人バンド「どうでもいーとるず」と題して「指にささくれができたよ」「人生の中で最も痛いことの一つ」といったあるあるを歌ったり、地元を紹介するヘヴィメタルソング「Welcome To Kobe〜地獄へ道づれ〜」はYouTubeショートで100万再生を突破。ひとり宅録バンド「TOM-ATOM」がネットで話題だ。主宰のとむさんは、ゲスの極み乙女やKANA-BOONから影響を受けて小学5年生の頃に音楽制作をスタート。「当時からSNSにアップしていたのですが『サブスクにあげるならバンドを組んで、いい設備で録音しなくちゃ!』という固定観念がありました」。そんな彼に転機が訪れたのは2019年のこと。「同世代のミュージシャン、関口スグヤさんがリリースしたアルバム『真夜中ボーイ』に衝撃を受けたのがきっかけ。楽器も歌もMIXも、何もかも自分でやっていたんです。俺も最高のアルバムを一人で作ってみたいと思って、自分だけのバンドとしての活動を始めました」。継続的に活動を続けて、今年の7月にはニューアルバム『たのしいワールドエンド入門』をリリース。作詞・作曲、歌唱、演奏、MIXと、すべての工程を行い完成した1枚だ。昔から変わらず、曲の編集をする際は無料アプリ「GarageBand」を使っている。「大事なのは経験とアイデア。作業量は多いですが、気が済むまでやり直せるのですべての音に愛着が湧きます。自分の音楽を聴いて、前に進める人がたくさんいてくれたらうれしいです」
Text_Nozomi Hasegawa