アーティストの松田ゆう姫が、空間と家具との関係を考えるプロジェクト〈フーズプロップス/Who’s Props〉と協働。インテリアデザイナーやガラス作家とともに、ユニークなランプを生み出した。そのプロセスについてインタビュー。
松田ゆう姫による、世界に一つのランプ作り
空間を彩るアートピース的存在が完成
歌手、俳優など多彩な才能を発揮する松田ゆう姫さん。イラストワークでは毒っ気と浮遊感が同居する不思議な世界観を見せる。そんな彼女が、住宅ブランド〈LIFE LABEL〉と〈Dolive〉のプロジェクト〈Who's Props〉に参加。これは、家具を自分の人生という物語のProps(=美術)と捉え、様々なアーティストと世界に1つだけのアイテムを創作する企画。今回松田さんがオリジナルアイテムとして作ったのは、ランプだった。
「実は、自宅の家具はお下がりばかりで。DIYしたものはあるのですが、自分でインテリアを買い揃えたことがありません。つまり私の家は、誰かの趣味でできています(笑)。今回のお話で、自分が欲しい、置きたいものはなんだろうと改めて考えてみたら、小さいアートピースのようなものがいいなと思いました。丸くてつるっとしたものに惹かれるので、電球も好き。じゃあ、ランプにしよう、となりました」
ランプのデザインモチーフとして選ばれたのは、松田さんが以前イラストで生み出したGeorge Ocean。サメに似た、シュールな出立ちの青色のキャラクターだ。製作には3D造形グループのGELCHOPと、長野にガラス工房を構えるSTUDIO PREPAが参画。こうしてできたチームに、理想のイメージを伝えるところから工程がスタートした。
出来上がったのが、球体が重なった下に青い流線型のフォルムが連なるデザイン。
「最初に見た感想は、『完璧じゃん!』ですね。海にリンクさせてサンゴのプレートをアクリルで作ってくださったのもさすがだなと」
「やっぱり、平面で生まれたキャラクターを立体で表現するところに難しさがありました。ガラスという素材でどんなことができるのか、逆にどんなことはやりづらいのかということも今回の学びの一つ。ゴテゴテと細かい装飾よりは、丸みを帯びたものが向いている。筆でシュッと書いたような、ふわりと線が繋がっていくフォルムに、ガラスは合っていると改めて感じました。そうした要因もあって、インスピレーション源はGeorge Oceanというキャラクターではありながら、なるべくシンプルなものを実現したいと考えました」
本プロジェクトに際して、ガラス工房も訪問。素材の特性を実感する機会となった。
クリエイティブプロセスにあたっては、「任せるタイプ」を自認。
「GELCHOPさんやSTUDIO PREPAさんたちなど、実際に手がける方がどうしてみたいかが重要なんです。私は、自分一人じゃつまらないことしかできないと思っていて。音楽活動でも、仲間が加わった途端すごくブラッシュアップされた経験があります。だから、私がおもしろいと思った相手に、自由にやりたいことをやってもらうのがいいはず。そう考えると、クリエイションにあたっていちばん大切にしているのは“仲良くなること”かもしれません。気持ちの交換が、良い作品に繋がるんです」
こうして生まれたランプはこれから、松田さんの生活を彩っていく。
「アートやオブジェって、用途がないという意味で無駄とも言える。でもその無駄こそが心の余裕なんですよね。元々家には好きなものだけを置くようにしていますが、今回のランプは自作なので、愛着もひとしお。これを置き、愛でる自分自身のことも好きになれます」
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松田ゆう姫
まつだ・ゆうき>>Young Juvenile Youthヴォーカリスト。GINZA本誌にて毎月花と花言葉にちなんだイラストコラムを連載。
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【Who's Props】
アーティストと特別なアイテムを作るプロジェクト。美術(=Props)で作り上げる、映画や舞台の世界観のように、Propsで生活を彩れたらもっと暮らしは楽しくなるというコンセプトのもと、新しい暮らしの楽しみ方を発信する。
Text_Motoko KUROKI