美術館やギャラリーで名画を眺めるのもいいけれど、 新しいコートやニットをワードローブに加えるように、 アートを所有してみるというのも、なかなか素敵なこと。 7人の女性に聞いた、大切な作品のストーリー。
山口郁子さん(TORO店主)のお気に入りは「小林真のコラージュとオブジェ」 レディの私物アートVol.5

小林真は古物好きなら誰でも知っている。羽根木にギャラリーOut of Museumをオープンしたことで、やっと手に入れられると喜ぶ人、続出!
「アーティスト本人の思い出の一品。デザイナーのクリストフ・ルメールさんも入手を願ったけれど、私の元に!」(山口さん)
ステンシルで言葉が描かれた平面に、謎の人形が。
自立した目玉焼きのオブジェは手作り。「審美眼があるだけでなく、手も動く人です」(山口さん)
店内にはさまざまな国で見つけたフォークアート、アウトサイダーアートのコレクションと共に、小林真さんの作品もレイアウトしています。お気に入りは彼の20代の時の作品。ギャラリーがオープンしたタイミングで譲ってもらいました。本人曰く「古本屋で集めていた古い発掘品の資料を片っ端からコピーして、コラージュしたもの。考古学的な真面目な感じがするので、それとは真逆のポップで可愛いミッキーマウスっぽいものにしてみようと思った」。他にも、神宮前のファセッタズムがオープンした時の壁一面のコラージュは素晴らしかったですね。
人の心を和ませるユーモアのあるところが、彼の作品の魅力。同時に、本人が幼少期から自然を愛し、幅広いジャンルのモノを収集し、慈しみ、旅を重ねてきて出来上がった、縦にも深く横にも広い審美眼に心が動かされます。真さんと私を結ぶものは、過去に作られた古物に魅了されていること。持ち主が移り変わっても、確かに残っていくものがあるし、新たな材料として生まれ変わることもあります。
モノに真剣に向き合って価値を見出していくことは私の表現でもあると思います。仕事柄、さまざまな国に出かけますが、その度にモノとの出逢いにワクワクがつきません。今一番の楽しみは登山に行った時に自然の中の芸術、鳥の巣を見つけることです。
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TORO店主<br /> 山口郁子
原宿にある古着屋TORO、OTOEのオーナー。マニアも唸る独自のセレクトが人気。
Photo: Keisuke Fukamizu Text: Satoko Shibahara