失恋の特効薬は、時間薬と男薬。そんな名言をとあるマンガで読んでめちゃくちゃ納得したことがある。でも、一個だけ忘れてやしないか。それは“おしゃべり薬”だ。
女性は、と限るのもあれだけど、とにかく失恋すると女子は女友達に話しまくる。色恋沙汰はみんなの大好物なうえ、人の不幸は蜜の味という言葉のとおり、恋愛成就の話よりは失恋話の方が盛り上がる。とびきりのスイーツをつまみに、さんざん愚痴って泣いて、最後はまあそんなこともあるよ、と共感してもらうと、少しだけ気が楽になる。
そういう“おしゃべり薬”を作品にしてしまったのが、ソフィ・カルの「限局性激痛」だ。私はそれこそ恋愛経験も豊富でなかった10代の終わりにこれを観て、心底共感したのだった。自分に起きたことの痛みを繰り返し語るプロセスが意味ありげな写真とテキストで綴られていくこの作品は、恋愛の始まりから終わりを超えて、立ち直りまで描いてしまっている。そこが、よくある恋愛映画や歌と違うところ。単なる共感で終わらず、爽快な気分になれる。
ソフィ・カル Photo:Jean-Baptiste Mondino