有名メゾンの展示会で「実はこの生地は日本の〜」と、告白されることがよくある。トップデザイナーをも魅了するその技術とはどんなものなのか? そこで4人のデザイナーに教えてもらいました。クリエイションに欠かせない、技術や職人さんから見えてきたメイド・イン・ジャパンの底力。
SIRISIRI × 八木原製作所など – 世界に誇る、日本のものづくり。デザイナーが信頼する、工場やアトリエに潜む魅力とは?

意外性のあるマテリアルと、伝統的な職人技術の組み合わせ。ジュエリーブランド〈シリシリ〉はどうだろう?
デザイナーの岡本菜穂さんは「東京で生まれ育ち暮らしているから、東京の工房に制作してもらいます。それはとても自然な摂理だと思うのです」と語る。
結果、行き着いたのは、籐とガラス。
今年10周年を迎えた〈シリシリ〉。全コレクションは100型を超える。デザイナーの岡本さんは頭の中に生まれたイメージを一度、自分の手で具現化することが多い。人気の高い籐のバングルも、試作品(左)を工房に持ち込むことから始まった。完成品は右端。籐のバングル ¥35,000(シリシリ)
工房から素材の提案もある。丁寧な手紙付き。
「作ってもらえそうな工房をインターネットでリサーチし、耐熱ガラスや江戸切子、ラタン工芸工房などに、飛び込みで相談に行ったりもしました。シリシリのジュエリーはシンプルなので、0・1mmの世界が本当に大切。だから自然と、歴史ある工場や技術力のある職人にたどり着くんです」
そのうちのひとつ、本所吾妻橋の八木原製作所は、本来はフラスコやビーカーなどの実験器具を作っている工房だ。ここでガラス商品のうちの半数以上を制作しているという。
さらに、
「最近使っているのは、透明度が高く、黄変しにくい国産のアクリル。美ら海水族館の水槽を手がけているアクリルメーカーに依頼しているんですが、ここの技術が本当にすごくって!」
ネックレス、バングル、イヤカフなど、ガラスに見えて実はアクリル製の商品も。
日本の高度なものづくりから、クリエイションの幅が広がることもあるのだ。
西麻布のアトリエ兼直営店での岡本さん。自分の中の感性を掘り下げるため、来年はスイスの大学院に留学予定。
Photo: Takehiro Goto
Text&Edit: Nanae Mizushima