私服でもメンズを愛用しているスタイリストの山本マナさんと飯島朋子さん、そして、男性ならではの視点で女性をスタイリングする服部昌孝さんという個性あふれる3名にインタビュー。それぞれの話をベースに、ギンザの新しい偏愛的スタイルを考察し、AからZまでまとめてみました。今回は飯島朋子さんの「A」を紹介。#新しいメンズスタイル
飯島朋子「男臭さを軽減させるジュエリー使いが重要」|新しいメンズスタイル AtoZ【ASK】

【スタイリストに訊いてみた】
ASK
独自の視点でメンズファッションをとらえる3名のスタイリストたち。それぞれが考えるメンズアイテムの取り入れ方とは?まずはプロに意見を訊き、今の傾向を探ってみた。
飯島朋子さん
「男臭さを軽減させるジュエリー使いが重要」
今、レディス誌でもメンズアイテムを使ってもいいですよっていうところが増えてきたのは事実ですね。前までは男性モデルへスタイリングしないとダメでしたけれど。
実は私もプライベートでは、ほぼメンズしか着ないんです。昔からメンズのフォルムが好きでした。きっかけは、周りにメンズを合わせている女子がいないからカッコいいだろうって尖った動機からなんですが。ユニセックスとかって言葉が流行る前から実践しています。でも意識して着始めたのは30代後半からですね。だんだん、体型とかも含めてレディスの服は、頑張らないと着られなくなってきましたから。演出して作り上げる女性像とかも気にしたくないし。メンズは、ベーシックをもとに作られているからすごく合う。若い時はお金がなかったのでメンズ古着ばかりで。レディスのユーズドはなんか、レトロムードが強いものが多いイメージがあって、アメカジを探すとどうしてもメンズになるんですよ。
メンズ服で比較的よく着ているのは 〈メゾン マルジェラ〉 ですかね。買い始めた当時のレディスはデザインがタイトなシルエットだったり、丈が短かったり、リブが太かったりしていて、自分には合わなかったんですよ。ここ数年ジョン・ガリアーノが「ジェンダー・フリュイド」を提案してきたこともあって、着られるものが増えてきましたけれど。40代になってからは、ちょっと派手なものはメンズの方が取り入れやすいなって思います。ブランドでいうと〈プラダ〉のメンズと〈ドリス ヴァン ノッテン〉です。あと、〈ラフ シモンズ〉なんかもそうです。こういう少し艶のあるメンズは、その辺の男子よりも私がちょうどいい(笑)。多分ドリスさんと同じぐらい似合うはず。でもドリスのレディスはもっと女性らしい人が着た方が絶対似合うだろうって思います。
メンズで選ぶアイテムは?って訊かれると、意外に思われますが実はコートなんです。持っているアイテムの8割はメンズコートです。でもジャケットは無理。何が違うのかっていうと、肩が落ちていてもOKなのがコートで、肩が落ちているとダサいのがジャケットだと思います。
それからシャツもいろいろ持ってますね。〈シャルべ〉に〈J. クルー〉、〈ブルックス ブラザーズ〉と、ほとんどがメンズ。Tシャツも男ものを買って洗いと乾燥を繰り返して小さくして着るようにしています。小物だけですね、レディスを合わせるのは。サイズ感はピタッとさせないのが自分のルール。“体に合わない”大きいサイズが基本です。あとは自分で直しちゃうかな。今日はいているパンツもロールアップしてそのまま縫い込んでしまってるんですよ。早くはきたくて買ったのに、お直しで待つのが嫌だから自分でだいたいやってしまうんです。
あとは足元のバランスも重要ですね。私はスポーツソックスを綺麗な格好ではくのが好きなんです。スニーカーはメンズと決めていて、なぜならウィズが違うからなんですよ。同じデザインでもワイドな作りなので、自分の足型にはぴったり。それとやってみたいのは、重いコートに〈エアジョーダン〉の組み合わせ。なんか軽快な感じしないですか?
メンズ服を着ているからって別に男性っぽさを目指しているわけではないので、そこの境界線として重要な役割を持つのがジュエリーなんだと思います。大振りのものを含めていろいろ持っていますが、これがあるのとないのとでは、見え感がまるで違います。
スタイルの参考にしている人はいないんですけど、イギリスの女優でシャーロット・ランプリングがメンズの服をまとったら似合うだろうなって。彼女はメンズの服を着るアティテュードを持っている。そういう強い意志で、あえてメンズ服を取り入れているような人は、すごくカッコいいですよね。
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飯島朋子
神奈川県生まれ。2000年に独立し、スタイリスト生活20周年を迎えた。最近は、国内の旅に夢中。キャンプで焚き火にハマり、YouTubeを見て特訓中。