“ユニフォーム”と言えば、〈プラダ〉を共同で率いるミウッチャ・プラダとラフ・シモンズが、シーズンを重ねながら掘り下げてきたテーマだ。それは単なる“制服”ではなく、タイムレスな意味のあるファッションであり、存在意義のある服だと2人は語ってきた。
進化するユニフォームルック
2023-24 autumn&winter news
ミウッチャはまた〈ミュウミュウ〉でも、既存のものから新しいプロポーションを生み出す試みを続けている。超クロップド丈のニットやシャツにプリーツのマイクロミニを合わせた、大人のスクールテイストがセンセーションを呼んだのも記憶に新しい(22年春夏)。
「ユニフォームやワークウェアという無駄を削ぎ落とした、決まった形式のあるものをベースに難易度の高いスタイルを提案しているのが、いまの〈ミュウミュウ〉であり〈プラダ〉です。しかも、女性を魅了するリアリティがありながら、非常に細かなニッチなところで小技を効かせています。シルエットや素材、デザインにしても、明らかに時代の先をいっているなと感じます」と、スタイリストの飯田珠緒さんは指摘する。
パンデミックを経て「日常を取り戻して楽しもう」と盛り上がる一方で、大量生産、大量消費することへの疑問が本質へと向かわせたのも、普遍的なスタイルが注目された背景にはあるだろう。テニスルックなどスポーツ系にまで広がったこの波は、2023-24年秋冬に向けてまた大きくシフトしている。Y2Kのカジュアルは消え、1980年代キャリアウーマンを思わせるパワーショルダーの〈サンローラン〉や、ネクタイを全ルックに採用した〈ヴァレンティノ〉など、オフィスを想起させるトレンドが続々と登場。モダンに解釈されたネオコンサバなユニフォームへと舵が切られた。
「服が売れないという景気の影響もあって、すでに春夏からスーツのようなより実用的なアイテムが多く提案されています。先行きの不透明さから、守られたい、どこかに“属していたい”という気持ちの変化もあるのかもしれません。ただ、〈ミュウミュウ〉のツインニットスタイルのように、原点回帰しながらもそこには必ず次の空気を読んだ新しさがプラスアルファされています。ベーシックは簡単に思えますが、デザインするにも着こなすにも新鮮さを加えるのは実はすごく難しい。でも、それができることこそ、本物の洗練だなと感じます」(飯田さん)
さらに〈プラダ〉は、看護師の白衣を思わせるシャツドレスなど、誰かを気遣う心をコレクションに投影。不安渦巻く世の中で、私たちが生きる現実の美しさ、豊かさを、“ユニフォーム”という記号としての衣服を通して伝えている。
Text&Edit_Aiko Ishii