着古されたような質感、未完成に見えるディテール。人の手の温もりや、物作りへの情熱が伝わってくる服。 着る人に喜びをもたらす、愛にあふれたクリエイション。 4つのスタイルと紡ぐ、親密で優しい時間。
愛ある服のエモーション


着る人との関係性を想像させる
ヴィンテージ風の服
長い歳月をかけて、着古しては修繕を重ねたようなパッチワークのコート。淡く透けるシルクのキャミソールドレスには可憐な花が描かれ、ストラップには気まぐれに飾りつけたようなビーズやメタルパーツが。フェイクファーのストールは、毛羽立ち、色褪せたようなダスティピンクの優しい風合い。今シーズン〈ドリス ヴァン ノッテン〉が掲げたテーマは「服への愛」。大好きでたまらない服を大切にし続ける時間が、着る人と服との間にインティメイトな関係性を紡ぎ出す。繕ったり、時にはカスタマイズしてみたりすることで、より“2人”の絆は深まってゆく。服が持つエネルギーへのリスペクトが、途方もなく豊かな世界を生み出すのだと、〈ドリス ヴァン ノッテン〉の秋冬の新作コレクションは語りかけてくる。ショートコート ¥691,900、ドレス ¥268,400、ピアス ¥119,900、リング ¥69,300、手に持ったストール ¥106,700(以上ドリス ヴァン ノッテン)

不思議な造形が力強く
“愛を呼び起こす”服
今年2月にこの世を去ったパコ・ラバンヌは生前、こんな言葉を残している。「人々を魅了し、愛を呼び起こすことこそがまさに衣服の役割です」。現クリエイティブ・ディレクターのジュリアン・ドッセーナは今シーズン、偉大なるデザイナーへオマージュを捧げるとともに、ラバンヌが大きな影響を受けたサルバドール・ダリに代表される、シュールレアリスムから着想を得た。胸元で結んだロープ状のディテールがもこもことボリューミーなニットに反して、同素材の毛足の長いニットのパンツは裾に向かってすとんと落ちる。バラクラバから飛び出したふわふわの髪も相まって、生み出される抽象彫像のようなフォルムは、視線を捉えて離さない不思議な力を宿す。“愛を呼び起こす”服は、後継者の手によって作り続けられている。ニットトップ ¥246,400、パンツ ¥284,900、バラクラバ ¥55,000、スニーカー ¥93,500(以上ラバンヌ | エドストローム オフィス)
Photo_Kota Ishida Styling_Yuka Sakakibara Hair&Make-up_Momiji Saito Model_Livia Text&Edit_Kayori Morita