さまざまなジャンルでモノクロームの話題が飛び交っています。 旬のクリエイションや現象から、いま注目すべき理由を考える。
ファッション界を賑わす、黒と白のニュース
なぜ今、黒と白なの⁉最新トピックス1
『ポリー・マグーお前は誰だ?』が描くモノクローム世界
白いカメリアの花に黒のアイラインを強く引いた目元。ヒロインに小松菜奈を迎えたヴィジュアルが強烈なインパクトを残した秋冬の〈シャネル〉のショー。イネス&ヴィノードが、パリのアパルトマンに暮らす一人の日本人女性の姿をとらえ撮影したというこのフィルムの着想源になったのが、1966年に公開された映画『ポリー・マグーお前は誰だ?』だ。
物語の主人公はパリで成功をつかんだアメリカ出身の若いモデルで、いわばシンデレラストーリーなのだが、白黒で綴られる全編がどこか過剰でキッチュ。ファッションフォトグラファーとして最前線で活躍していたウィリアム・クラインの初監督作で、当時のモード界がアイロニックに切り撮られている。刺激的なスタイルも見どころだし、60年代のパリの空気やシュールさ、イラストを使った映像など今なお新鮮。〈シャネル〉はもちろん、ぜひ本作品も観て今季のムードを体感したい。
回顧展で「モードの帝王」のノワールに触れる
「黒はひとつではなく、何色もある」とはイヴ・サンローランの言。300点以上の作品を展示する回顧展で彼の多彩な「黒」を追ってみたい。
1968年発表のジャンプスーツは、普遍的なスタイルを確立。1984年のアンサンブルの絹ベルベットは、ひたすらに繊細な表情を見せる。白襟とのバランスが印象的なのは、映画『昼顔』(67)のドレス。女性像をシンプルな配色で表現した。精緻な意匠をしっかりと受け止める度量もこの色ならでは。2000年製作のケープとドレスはその極致だろう。 謎めいていて、でもチャーミング。サンローランにとって黒とは「女性」の暗喩だったのかもしれない。
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Photo: Miu Yasuda Text&Edit: Aiko Ishii, Motoko Kuroki, Junk Tatsumi Cooperation: Azumi Hasegawa