女性が強いと言われて久しいけれど、肩肘張りたいわけじゃない。 シルクやレースに包まれて、風を感じていたいんだ。 そんなコレクションを携えて、デザイナーのナターシャが来日。 彼女と〈クロエ〉を形作るあれこれを話してもらった。
デザイナーのナターシャが語る、現代のクロエガール

バックボタンのプリーツドレス ¥300,000、バッグ〈TESS〉H17.5×W20.5×D6cm ¥199,000、バングル ¥56,000(以上クロエ │ クロエ カスタマーリレーションズ 03-4335-1750)
イレギュラーヘムのドレス ¥754,000、中に着たニットトップ ¥142,000、シャツ ¥151,000、ネックレス ¥70,000、バッグ〈TESS〉H22.5×W26.5×D7cm ¥222,000、シューズ ヒール9cm ¥161,000(以上クロエ │ クロエ カスタマーリレーションズ)
肩口にレースをあしらった七分袖のブラウス ¥231,000、立ち襟フリルの幾何学柄クロップドトップ ¥110,000(共にクロエ │ クロエ カスタマーリレーションズ)
オーバーサイズのムートンブルゾン ¥681,000、イレギュラーヘムのシルクドレス ¥554,000(共にクロエ │ クロエ カスタマーリレーションズ)
エポレットやスナップボタンが利いたユーティリティコート ¥348,000、ウエスト切り替えのロング袖ブラウス ¥231,000、パンツ ¥189,000、ブーツ ヒール9cm ¥156,000(以上クロエ │ クロエ カスタマーリレーションズ)
「日本にはもう5、6回来ているの。私の親友の母は日本人だし、あなたたちの文化には強いつながりを感じている。オヅやキタノの映画も大好き!」 〈クロエ〉のクリエイティブ・ディレクター、ナターシャは親しみたっぷりに話し出す。
「コレクションには私の愛が詰まっています。多くの女性像が含まれているけれど、私が〈クロエ〉の本質だと思うのは、ブルジョワジーということ。フランス革命を起こしたのではなく、それを助けた階層ね。私の役割も、革命を起こすことではなく、女性たちの中の革命を捉え、助けることだと思ってるんです」
その着想源は、たとえばステファーヌ・オードランだ。「一見普通、でも洗練された内面がある、まさに〝フレンチウーマン〟」という女優の姿は、今のクロエガールに映し出されている。
「クリエイティブで大事なのは、正直さ。好きなことに忠実か、100%信じているか。あとは、アイデアをどう実現するか。私は、デザインはアートとクラフトの間にあると思う。コンセプトを職人の力で形にする。形にしたものは、誰かに『欲しい』と思われる対象であるべきだから」
ナターシャの言葉には、30代にしてトップに就いただけの重みがあった。そしてそのキャリアと同時に、彼女は母でもある。
「仕事とプライベート、私にはどちらも絶対に必要。でも、バランスというよりは、専念の問題ね。家のことは仕事の前に整えて、アトリエで携帯を10時間見られなくても心配ないようにする。反対に、家にいる時は、家族のことだけを考えています。自分がその時していることに誠実に、専念すること。確かに私は忙しいけど、手を止めることもアンプラグすることも知っているから、大丈夫なの」
アンプラグ中の彼女が、恋人と5歳の息子、13歳の娘と過ごす週末は〝シンプル〟だという。
「料理をしたり、展覧会に行ったり。映画もね。娘はもうオヅも観るし、息子は、ジブリで日本語を覚えてました(笑)」
家族の話をする彼女はとびきりチャーミングだ。最後に、今してみたいことは?と尋ねると、少し考えてから口を開いた。
「〈クロエ〉を成功させること。幸い、プライベートは満ち足りているから! 多くの女性に〈クロエ〉を着てほしいし、服の力で、自分のしていることを信じ、自信を持って人と関わるようになってほしい」
そして、フフっと笑いながら付け加えるのだ。
「〈クロエ〉って、私にとって人生最大のチャレンジなのよ!」
ナターシャ・ラムゼイ=レヴィ
パリ出身。雑誌編集者の父親を持つ。今回の来日では瀬戸内海の豊島・直島も訪問。「建築やアートが自然と相互作用している様子に感動した!」と語ってくれた。
Photo: Yuki Kumagai, Kisshomaru Shimamura (Natacha) Styling: Mana Yamamoto Hair: HORI (bNm) Make-up: NOBUKO MAEKAWA (Perle Management) Model: Katie Neels Text: GINZA (Natacha) Text & Edit: Mika Koyanagi Translation Revising: Akihiro Sayama