〈表参道 茶洒 金田中〉
中と外が涼やかに混ざり合う、 隠された庭園へ。
扉を開ける前から、この店はすでに始まっている。入り口にたどり着くまでの、ひんやり仄暗いエントランスにハッとするからだ。現代美術家の杉本博司さんが特注した四半敷の敷瓦が黒々と輝く通路を歩く。見上げればさらに、地面に向かって垂れる同氏の彫刻があって、この時点ですでにひとつの作品を堪能した気分だけれど、入り口へ向かう階段を上りきるとパッと日が差し、視界が開けた。ぽっかり口を開けた店内と、苔むす庭園が境なく混ざり合っていて、ドアを開けて中に入ったはずが、また外にいるような錯覚に。そこに、10mはあろうかという見事な一枚板のベイヒバのテーブル。食べるのは、可愛らしいわらび餅。口に入れてみると、人肌ほどに温かく、本蕨粉の香りがふわり。なにより黒みつが最高だ。甘さと美味さを噛みしめながら、目線を庭に戻すと、みずみずしいシラカシが爽やかに風に揺れている。深い陰影をたたえた鉄平石は水平に積まれ、名俳優のように涼やかな表情を見せる。その下の祠には、これまた杉本さんが置いたという磨崖仏に見立てた鎌倉時代の透かし彫り五輪塔。目の前にガラスがなくて、そして表参道にこの場所があってよかったと思わず感謝をしながら、お茶をすする。
新橋の料亭「金田中」が営む和のカフェ。現代芸術家の杉本博司さんと建築家の榊田倫之さんによる新素材研究所がデザインを手がける。「わらび餅 黒蜜」は¥1,500。昼夜の各コースに加え、「女将さんのカレー饂飩」(¥800)などのアラカルトも。
「茶洒 金田中」
住: 東京都港区北青山3-6-1 オーク表参道2F
☎: 03-6450-5116
営: 11:30〜20:30LO(ランチ〜14:00)
休: 不定休
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