現地時間2月10日(月)アメリカ・ロサンゼルスで開催された「第61回グラミー賞授賞式」。開催前からGINZAでも注目していました。この授賞式に訪れたGINZAレディのAYが現地の様子をレポート。各界のセレブリティが集結する権威ある音楽アワードの魅力&裏側に迫ります。
音楽と女性のパワーを体感!「第61回グラミー賞」の魅力を現地レポート

はじめまして、AYです。洋楽に出会ったのは2002年頃、ブリトニー・スピアーズやアヴリル・ラヴィーン、バックストリート・ボーイズなどに熱をあげていました。2006年からアメリカ・ニューヨークに渡米し、1年前からレコード会社にて洋楽を担当しています。
このたび、念願の「グラミー賞」へ全社を代表して訪れる機会に恵まれました。音楽好きなginzamag.comの読者に現地の熱量を伝えたい!という思いから期待と緊張が入り交じったレポートをお届けします。
グラミー当日、まずは腹ごしらえ
初っ端から食事の話でごめんなさい。朝はホテルでベーグル!シリアルの種類が豊富なところもアメリカらしい。しっかりシリアルも堪能しました。
グラミー賞自体は、現地時間17時からのため、お昼は軽食カフェへ。現地で人気のJoan’s on Thirdでサラダ中心のランチを頂きパワーアップ。
ホテルへ戻り、準備
食事のあとはホテルへ。実は渡米前、グラミー賞授賞式の会場で着るイブニングドレス探しに時間がかかりました。こだわり派のAYとしては、きらきら装飾でスリット入りのロングドレスを絶対に着るぞという意気込みだったのですが、オンラインで購入できるイブニングドレスのほとんどが海外からの輸入。配送に3~5週間かかるやら、中国の旧正月休暇と重なり取り寄せ不可(オーマイガー!!)などかなり手こずりました。何とかイメージの物を購入できたので、その姿はまたのちほど。メイクも華やかに!
いざ、グラミー賞会場へ。
会場はステープルズセンター。会場周辺の道路は封鎖されていました。いつもより気合の入った高いピンヒールで長い距離を歩くことに…. もうヒール脱ぎたい!(笑)そしてここ数年の稀に見る寒さで、日が落ちると10℃前後で素肌で歩くには凍えるほどだったLA。自分を含め、薄着で寒そうな出席者同士で「寒いね…」と無言のアイコンタクトで気持ちを共有しました。
グラミー賞では、きらびやかでゴージャス(ときどき過激)なセレブリティ達のドレススタイルに注目が集まりますが、私の席のまわりも華やかな装いばかりです。男性はタキシード、スーツが基本、女性はロングドレスが多く、スパンコールなどキラキラとしたドレススタイルが目立っていました。私もしっかりと会場に馴染むことができました(笑)。
グラミー賞は生放送のテレビ番組のため、会場内のテレビスタッフによる秒刻みのカウントダウンの声が響きます。テレビっぽい~!
いよいよスタート!
今年の司会者は、過去に15回グラミー賞の受賞歴を持つ歌手のアリシア・キーズ。61年のグラミー賞の歴史で、14年ぶり、史上5人目の女性司会者の起用となりました。私が昔から愛し、大尊敬するアリシアは、緑のドレスを身にまとい、司会は初めてながらこなれた様子で登場。ベテランのオーラが漂っていました。
今回、グラミー賞パフォーマンスデビューとなったカミラ・カベロのオープニングパフォーマンスで開幕。出身国キューバがルーツのカミラは、「ラテン」をテーマに大勢のダンサーや楽器部隊と共に歌って踊ります。あの大御所ラテンスター、リッキー・マーティンや、今や世界で人気を誇るJ.バルヴィンもスペシャルゲストで登場。近年、ラテン音楽がメインストリームに急増し、特に2018年は、ラテン音楽の爆発的ヒットの年と言われ、まさに“今”を象徴したテーマとなりました。
過去にラテン圏でも生活をし、ラテン文化や音楽も大好きなAYはすでにテンションマックス。エネルギッシュで迫力のあるステージは、現在YouTubeでも見ることができます。
司会者のアリシアが「今夜、私がここに一人で来ると思ったんじゃない?私の姉妹達を紹介させて」と語ると、現代の「女性パワー」の象徴とも言えるレディー・ガガ、ジェイダ・ピンケット・スミス(ウィル・スミスの夫人)、ジェニファー・ロペスと共に、なんとバラク・オバマ前米大統領夫人のミシェル・オバマが登場!
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Celebrating friendship and empowering women through music. #GalentinesDay
音楽賞へのミシェルの登場は、アメリカ人にとってもサプライズな出来事で、会場からはスピーチをかき消すほどの大きな歓声、スタンディングオベーションで拍手が起こり注目は一気に彼女へ。黒人初のファーストレディーであり、音楽番組やバラエティ番組に登場しては、その気取らなさ、説得力のあるスピーチで絶大な支持を集めるミシェル。それぞれ、音楽もつパワーをテーマにスピーチ!序盤からのこの豪華な人選も含め、「女性の力強さ」を打ち出した演出でセレモニーがスタート。
極私的名シーン①
私の心を動かした名シーンを紹介します。まずはアリシア・キーズのパフォーマンス。今回司会者としての出演だったので、パフォーマンスはしないだろうな、と思っていたところの登場でサプライズでした。「Songs I Wish I’d Written(自分が書いた曲だったらな)」と題し、過去の名曲フージーズ「Killing Me Softly」などから、最新ヒットのジュース・ワールド「Lucid Dreams」やコールドプレイ「Clocks」、ドレイク「In My Feeling」、エラ・メイ「Boo’d Up」まで、アレンジを効かせカバーメドレーを披露。アリシアは冒頭に「“クラブ・キーズ”へようこそ」と言って演奏を始め、ジャズやR&Bバーのような雰囲気で、ピアノ、ベースギター、エレクトーンなどを加えたグルーヴィーなアレンジを効かせたメドレーで披露。最後は自身のヒット曲「Empire State of Mind」で会場を沸かせ、左右二つに置かれたグランドピアノの間での見事な弾き語りは、SNSでも話題になっていました。かっこよすぎ。
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極私的名シーン②
モータウン60周年を祝ったパフォーマンスには、ジェニファー・ロペスが登場。モータウンの設立に関わったスモーキー・ロビンソンや、Ne-Yoも参加し、ジャクソン5の「Dancing Mashine」、マーヴェレッツ「Please Mr. Postman」、テンプテーションズ「My Girl」などを披露しました。これまでジャクソン5、ダイアナ・ロス、スティーヴィー・ワンダーなどの大物アーティストを輩出し、ブラックミュージック、ソウルミュージックを牽引してきたレコード会社である「モータウン・レコード」のトリビュートに、ラテン系でダンス、ポップミュージックが多いジェニファーが果たして適役だったのかと意見も多くありました。そういった背景を除いても、本当に最高レベル、圧巻のパフォーマンスでした。今年50歳を迎えると思えないほど美しくパワフルなダンスに圧倒させられました。
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極私的名シーン③
そして、昨年8月にこの世を去った“ソウルの女王”故アレサ・フランクリンを称えた特別パフォーマンスが行われました。同パフォーマンスの前には、この1年で亡くなったミュージシャンらのビデオや画像が流れ、その中には昨年4月に若干28歳の若さで亡くなったアヴィーチーや昨年9月薬物過剰摂取により26歳で亡くなったマック・ミラーらを含め、その他の著名アーティストへ追悼の意が表されました。
ヨランダ・アダムスとファンタジア、アンドラ・デイによるパフォーマンスは、アレサ・フランクリン最大のヒット曲の一つである「(You Make Me Feel) Like A Natural Woman」。ゴスペルやソウルがルーツのシンガー3人の迫力ある歌声が重なり、会場にいる人々の魂を揺さぶるパフォーマンスでした。これぞソウルミュージック!叫びにも似たソウルフルな歌声に、私は涙が出そうになりました。
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賞レースの結果は?
今回の受賞では、アメリカ社会が抱える人種差別問題などの実像を描き大きな話題となったチャイルディッシュ・ガンビーノの「This Is America」が、「年間最優秀楽曲」の主要部門2部門を含む4部門を受賞で、ヒップホップ音楽史上初の快挙となりました。また、このビデオを監督したヒロ・ムライ氏が、最優秀ミュージック・ビデオ賞を受賞し、同作がいかにアメリカ社会に与えた影響の大きさを実感しました。この日チャイルディッシュ・ガンビーノ本人は授賞式を欠席しており、不在での受賞となりました。
そして、カントリー歌手のケイシー・マスグレイヴスが主要部門「年間最優秀アルバム」を含むノミネートされた4部門全てを受賞し、チャイルディッシュ・ガンビーノに並ぶ最多タイ4冠を獲得しました。話題作が多い中、特にこの主要部門にノミネートされたことだけでも驚いていたというケイシーは、受賞発表時驚きを隠せない様子でステージに上がっていたのが印象的でした。年間最優秀アルバムを受賞した作品『ゴールデン・アワー』は幅広い層に称賛され、事前予想でも有力視されていたため、会場は「やはりな」という反応でした。そしてこの受賞は、カントリー音楽界にとっても、久しぶりの大きなタイトルをもたらす結果となりました。
今回のグラミー賞では、これまで偏った受賞などが問題視されていた状況を受け、多様性を確保すべく主要4部門の候補枠を拡大するなど、60年に及ぶグラミー史上これまでにない大改革が行われました。そのため、多くの女性アーティスト女性や有色人種のノミネートも多くあり、現在の社会的背景、政治背景を反映し、多様性が重要視されたグラミー賞となっていたのが全体的な印象でした。アメリカではここ数年でそういった社会の動きが活発化し、グラミー賞に限らず、しばらくはそういった世相・情勢が密接に関わっていくショーやレースが続くのかもしれません。
ちょこっと番外編
「音楽」や「洋楽」などひとえに言っても、その中には数え切れないほどの音楽レーベルが細かくあり成り立っています。それぞれのレーベルがグラミー賞を記念し、その前後に関係者を呼んだパーティーを盛大に行います。そのいくつかに参加させてもらったのですが、出席者(特に女性)は基本みんなドレスアップ。装飾も煌びやかな会場で、DJの音楽に合わせ踊る人もいれば、自由に会話を楽しむ人もおり、その中で提供されるお酒、フィンガーフードなどはすべてフリー。所属や関係するアーティストも参加可能なパーティーで、それぞれのレーベルごとの色があり、その規模感や祝い方も華やかでした。協賛社も付くほどで、彼らにとって、音楽やエンターテイメント自体が非常に高い立ち位置にあるカルチャーだなぁと、改めて感じました。
というわけで、私の人生初のグラミー賞が幕を閉じました。長年音楽には触れてきましたが、これまで画面越しの世界でしかなかったグラミー賞に実際参加でき、その空気を肌で感じられたことは一生の経験となりました。アーティストたちが常に時代の動きに敏感に反応し、自らの声を音楽に反映させ主張するメッセージ。そこから新しい音楽が生まれ、進化し続けるアメリカの音楽界。その成果を毎年盛大に祝うグラミー賞や音楽賞の数々。改めて音楽の持つ魅力、影響力にゾクゾクし、楽しすぎた一時でした。今後も素晴らしい音楽の世界を共に発展させ、共有していこうという活力にみなぎっています!それでは。
No Music No Life!
Text:AY