2021年、ブランド創設100年を迎えたGUCCI。アニバーサリーイヤーの締めくくりにふさわしい、その世界観へと浸ることのできる展覧会「Gucci Garden Archetypes」が東京・天王洲で開催されている。13の部屋からなるエキシビションを、クリエイティブレーベル「PERIMETRON」のプロデューサー佐々木集、映像作家OSRIN、グラフィック&プロップデザイナー森洸大、デジタルアーティスト神戸雄平の4名が巡った。細部にいたるまでブランドの精神が宿った空間の連続。クリエイターならではの視点とともに各部屋の見どころをお伝えします。
リアルなペイントや絶妙な映像作品に、同じ作り手として見入る4人の姿が。
PERIMETRONと巡る Gucci Garden Archetypes 04

Room 6 Dans Les Rues 2018年プレフォールコレクション
――この部屋は1968年のパリ五月革命をテーマにしているということで、壁一面に「愛だけあればいい」「今を生きよ」「俺たちの夢に限界はない」などさまざまな言葉が書かれています。
佐々木集(以下S) 自分は壁に書いてあるような文化や思想を背景にしています、というメッセージを訴えている空間なのかな?
神戸雄平(以下K) ここでは全く洋服を見せていないよね。ただ壁から天井までグラフィティで埋め尽くした通路が続くだけ。
森洸大(以下M) 天井の蛍光灯ランプのカバーにペイントのスプレーがかかっていたり、こまかい演出も実際のストリートそっくりにちゃんと作られているよね。その徹底ぶりがすごい。
S これだけ多様な意見やストレートな表現をひっくるめながら、ちょっとした遊びやセンスを感じさせる仕上がりにするのが、さすがだなと思う。
OSRIN(以下O) この時のコレクションのインスピレーションの源だという「美は路上にある」っていう言葉、すごくいいよね。そういう気持ちをラグジュアリーブランドのクリエイティブ・ディレクターが持っていてくれてよかったと思うんだ。
S ラグジュアリーブランドって高価で上質なものを扱うから、ともすれば排他的と捉えられてしまいがちだけど、アレッサンドロにはそれがないよね。
K そう、等身大でカッコいい!
M そのスタンスを一貫して保っているところがすごいなって思う。
O 俺たちファッションの歴史に詳しくないし、日頃からラグジュアリーブランドに親しんでいるわけでもないから、正直、ここに来て何を感じられるんだろう?とちょっと不安だったけれど、展示を見て、俺たちの考え方ややり方に似ている部分が結構あって安心したよ。
Room 7 Gucci And Beyond 2017年秋冬コレクション
――恐竜やエイリアンなど昔の映画のシーンを彷彿させる要素がミックスしている部屋でした。ここではアレッサンドロ自身の驚異に対する執着や、この世のものとは思えぬ世界への傾倒を詩的に表現しています。
一同 ここの展示は最高だった!!
O 恐竜や人形が展示してあるショーケースの前にモニターがあったじゃない? 小さい画面なのに映像が面白くて釘付けになっちゃった。
S ジャングルだったり宇宙だったり、いろんなキャラクターが一緒の空間にいて、想像の詰め込みだよね。アレッサンドロがそれだけいろんな過去の作品を見ているからこそ、こうやってミックスできるんだろうな。
K その上で、これを観る人が自由に物語を想像できる。受け手によっていろんな空想が生まれるんだろうね。
M そう、「これはこういう風に見ろ」っていう感じじゃない、説明的ではないところが好きだな。
O 力んでないんだよね。こういう手法に憧れるよ。
S 普通はこれだけいろんなものを集めるとガチャガチャするのに、それをひとつの展示にまとめる力が凄い。あと、エイリアンを使うのだって実はそれほど奇抜な手法ではないけれど、目だけギラギラ加工したり。そういう“ラインの持っていき方”が巧いなー。
K 「誰も見たこともないものにしよう!」って変に盛りすぎちゃうことって往々にしてあるよね。だけどアレッサンドロは引き方がめちゃめちゃ絶妙なんだよ。
M 壁の上に展示されていたゴリラの顔もめっちゃよかったよね。『2001年宇宙の旅』の猿みたいだけど、ちょっと変わったバージョンみたいな。
O そっくりにしようと微細なところまでクオリティーを突き詰めるとゴリゴリになっちゃうけれど、アレッサンドロは調味料の合わせ方が巧いんだろうね。
S この展示を作る時に「宇宙人がいて、扉を開けたら猫がいて……」って言葉で伝えても、プロップを制作する側は戸惑うだろうし、意味不明で反発も起こるかもしれない。けれどアレッサンドロにはそれでも彼らを納得させるだけのカリスマ性があるんだろうな。
O ほんと、ナイスチーム!
Room 8 In Bloom
――Room 7と同じ空間にある、香りをテーマにした部屋です。2017年にアレッサンドロが初めて手がけたフレグランス「グッチ ブルーム」の世界観そのものの自然の花園が広がっています。
K さっきの展示で恐竜を見ている最中から、すごくいい香りが漂ってきてたね。
M 植物がたくさん生い茂っている演出のところには、床に本物の土があったよ。
O ひとつ前のSF的な展示とはうって変わって小洒落ていたよね。
S 花の色がハイコントラストじゃなくて、微妙なくすんだ色を取り合わせていて、上品な配色が素敵だったな。
Room 9 Gucci Hallucination 2018年春夏コレクション
――スペイン人アーティスト、イグナシ・モンレアルの写実的な絵に囲まれた部屋はいかがでしたか?
O 俺が初めてグッチというブランドを知ったのが、まさにこの世界でした。
S 俺もグッチのホームページで見てたね。
K この絵はただただ強いなって思った。この部屋にはグッチの商品はなくて、絵しかないもんね。
O これまでの部屋では世界観を遠回しに見せていたけれど、この部屋はグッチ感がすごく出ていたと思う。絵の中に描かれた人がグッチのバッグを持っていたり、ロゴTを着てたり。
M 写実的な絵なんだけど、よく見ると奥のほうに白いユニコーンとかが急に大雑把に描かれているんだよ。シルエットだけとかね。そのギャップ、手の抜き方が良かったなぁ。
O 「注目してほしいのはグッチのバッグだけど、こっちにもお話あるよ!」みたいな。
K 天使にwifiのパスワードのメモを持たせるとか、こまかい遊びがあるの、大好きだよ。
Gucci Garden Archetypes展
Gucci Garden Archetypes展
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PERIMETRON
2013年、音楽家常田大希がYouTubeチャンネルを開設、映像を公開し始める。2016年、プロデューサーの佐々木集と映像作家のOSRINが参加し、クリエイティブレーベルとして始動。グラフィック&プロップデザイナーの森洸大、デジタルアーティスト神戸雄平をはじめ、10名のクリエイターを擁する。King Gnuやmillennium paradeなどのアートワークやMV、ライヴ演出を手がけるほか、多方面との協業も行う。