春をスキップして夏がやってきたような、よく晴れた昼時。ハンディカムを片手に公園にやってきたのは、MVやブランドのイメージフィルムなどを手掛ける映像ディレクターのニナさんだ。母親が染めたという大判のスカーフを芝生に広げ、休日の束の間を過ごしにやってきた。
ニナさんが福岡から上京してきたのは約3年前。それまでは映像ディレクターのイメージからは思いも寄らない、あることに没頭してきた人生だった。
「3歳から18年間、ひたすらフィギュアスケートに打ち込む日々を送っていました。コーチとしてフランスへの渡航が決まっていたくらい本気で取り組んでいたのですが、コロナウイルス感染症の流行で渡航を断念せざるを得ない状況になって。その時期は心身ともにぼろぼろの状態で、それを機にアスリート人生を止めて別のことを始めようと決心したんです。映像業界を志すきっかけになったのは、映画と音楽が好きな私を見た父の勧めです。上京してから半年ほど映像ディレクターにアシスタントとしてついていましたが、自分には自分の色があると思いひとりでやっていくことにしました。そこからは必死になって頑張りましたね」