ロンドンを拠点として活動する、ヘアデザイナー小戸紀代子さんが気になるアーティストとコラボし、その人らしさをヘアで表現します。アーティストのバックボーンを探るインタビューとともにお届け。
ヘアデザイナー小戸紀代子の“WHO ARE YOu ?” vol.3
小戸紀代子 × Ryan @ロンドン

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今月はアーティストであり、ファッション研究家としても活動するライアンにインタビューしてきました。私は彼の自由でアブストラクトな表現に魅了されているファンの1人で、時には作品を一緒に創作する仲間でもあります。会った後は、「いっそのこと捨ててしまおう」と思っていた感情を「やっぱり大切に持っておこう」と、いつも思い直す事ができます。

そんな彼との出会いは10年近く前。初めて会った時から独特なムードに魅了され、作品のモデルを長年お願いしています。彼はとてもシックでインテリジェント、それと共に途轍もないパッションの持ち主。イギリスの令和パンクとも言えます。そんな彼にどんなヘアスタイルを提案しようかと考えていた時、「髪の毛を真っ黒に染めたい!」そして「黒いゴシック系のファッションで行くからっ!」と電話がありました。その瞬間に、彼がお母さんのウェディングドレスを着て90年代『Vogue』の表紙をパロディーして、自分でポートレート撮影をしていたことを思い出しました。壁には昔の『Vogue』の切り抜きがたくさん貼ってあったことも。シックな部分は壊さずに、シャープかつ不安定な感じを投入しよう。そしてライアン流“黒ゴシック”の意味を理解しつつ、ヒントを少しずつ繋げてデザインにしました。早速、髪の毛を真っ黒に染めてアイロンでストレートにし、黒いエクステンションをペタッとアクセサリーのように片側に付けました。「ふふっNice」と微笑んだので、一瞬でこれで行こうっ!と思いました。彼のNICEは本当にNICEだからです。モデルさん本人が髪型によってワクワクした瞬間を見れた時が1番嬉しいのです。


Photo&Text: KIYOKO ODO