ラッパーとビジネス書、1階が病院の書店、古典芸能…。気になる注目のコンテンツをずらっと紹介。本にまつわるあれこれ、知っておくといいことあるかも。#ブックトピックス
ラッパーのバイブル本、アートブックショップ、初心者向けの「文楽」。今知っておきたい、ブックトピックス vol.2
ラッパーのバイブルはビジネス書!?
刺激的な著書をご紹介
ラッパーたちが、“裸一貫でサグライフをサヴァイブしてメイクマネーしている”と思ったら大間違い。読書を通して、指針となるフィロソフィーを学んでいる。特に多くのラッパーに影響を与えているのが、16世紀のイタリアで書かれたリーダーシップ論『君主論』と、90年代に発表されベストセラーとなったビジネス書『The 48 Laws of Power』。読めば彼らの音楽をより理解できるかも。
どうしてそこに?
アートブックショップ
東京・代田橋の沖縄タウンのはずれに佇む、こぢんまりしたガラス張りの工務店…と思いきや、店内に所狭しと並ぶのはクールなヴィジュアルブックの山。実はここ、アートブックショップなのだ。その名は「flotsam books」。オンライン専門書店としてかねてからアート好きの信頼を集めていた同店が、実店舗を構えたのは昨年1月のこと。親交のあった写真家の山谷佑介さんが見つけた物件で、「ここで個展をしたいから店として借りてくれ」と頼まれたのがきっかけだそう。
「なぜここに?」とツッコみたくなるアートブックショップは他にも。2019年末に王子から池袋に移転した、東京藝術大学の修了生3名が主宰する「コ本や honkbooks」がそれ。外からでは本屋があるとはまるで分からない、建物の2階にある。なんでも彼らが昔から付き合いがある人の事務所がもともとここにあったのが縁で引っ越したとか。場所からしてインスタレーション作品のような趣のあるそんな2店に、おすすめのアートブックを3冊ずつ紹介してもらった。
代田橋の沖縄タウン
「flotsam books」
営業時間: 14:00〜20:00
定休日: 不定休
1階は病院
「コ本や」
Tel: 03-6907-2239
営業時間: 12:00〜20:00
定休日: 月
話題の期間限定ショップも目が離せない
「SKWAT / twelvebooks」
2020年10月9日に拡張オープンした複合施設。1Fに〈LEMAIRE〉の路面店、地下にはイベントスペース「SKWAT Park」が。2Fの「twelvebooks」には建築やファッションの写真集が並ぶ。
住所: 東京都港区南青山5-3-2Tel:03-6822-3661
営業時間: 12:00〜18:00
定休日: 日月
古典芸能を今の気分で
バラエティ豊かな本を入り口に
食わず嫌いはもったいない!
新たな扉を開けてみよう
古典芸能とは、歌舞伎や能、狂言、文楽、日本舞踊や落語、講談など、近世以前から始まり、現在でも伝承され続けている芸能のことをいう。かなりハードルが高いジャンルだが、今回はその一歩を踏み出せるようなものをご紹介したい。
まずは文楽。文楽というのは、義太夫節を語る太夫と三味線、人形の3つからなる人形浄瑠璃のこと。70年以上歌舞伎をはじめとした舞台作品を観続けている演劇評論家の渡辺保さんの著書『文楽ナビ』では、編集者との対話形式で、演目ごとの見どころをつまびらかに紹介している。この質問が面白くて、編集者は「〜が礼儀なんですか?」や「〜理解できないです」などと芝居を観ていて「?」と思うようなところを遠慮なくどんどんぶつける。その著者と編集者の丁々発止のやりとりを読んでいくと、少しずつ文楽の見方のポイントがわかってくる。「文楽は目で見るだけでなく目に見えないものを見なければならないし、それにこそ現代とのつながりがあるのです」と渡辺氏は述べる。
「見える/見えない」とは本当はどういうことなのかを巡る問いは現代の問題にも通じる。落語の演目「心眼」がタイトルに使われていた写真集にもその問い立てが。また、能の舞台でさまざまな未練を残して死んだ幽霊たちを蘇らせた劇作家・岡田利規の戯曲や、希代の歌舞伎俳優・十八代目中村勘三郎を巡るエッセイも興味深い。ジャンルは異なれど、古典芸能に触れることは現代につながっていることが感じられるだろう。