40年以上の長きにわたり、現代アートの発信地、そして歴史的な邸宅建築として愛された東京・品川の「原美術館」。2021年1月に惜しまれながら閉館したが、群馬・渋川の別館「ハラ ミュージアム アーク」と統合し、同地で「原美術館 ARC」として再始動。その魅力と、2021年4月24日から開催される展示を詳しく紹介します。
「原美術館 ARC」が開館!初の展覧会は『虹をかける:原美術館/原六郎コレクション』
美術館が所蔵する
貴重なコレクションを一挙に公開
「原美術館 ARC」は、建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を2019年に受賞した建築家・磯崎 新が手掛けた。榛名山麓の高原に建ち、芝生の緑と黒いトーンの木造建築が美しい。まさに、建物自体がアート。
記念すべき初の展覧会のテーマは“虹”。美術館の運営財団の名「アルカンシエール(Arc-en Ciel)」の和訳であり、人と人が美術を通じて交流する架け橋でありたいという理念のイメージでもある。
また、見る者の位置によって異なる色彩を表す虹は、視点や角度を変えることによって見えないものが見えてくる美術のあり方にも通じるという。
書院造をモチーフにした特別展示室「觀海庵(かんかいあん)」。内装に木、石、和紙、漆喰などを用い、名工の美技も堪能できる。
今回の展示は、財団が所蔵する「原美術館コレクション」と「原六郎コレクション」から、バラエティに富んだ作品が選出される。
約1,000作品を誇る「原美術館コレクション」は、理事長・原俊夫が40年以上にわたって収集していた、1950年代以降の世界各国の現代美術から構成されており、草間彌生やアニッシュ・カプーア、艾未未(アイ・ウェイウェイ)、鈴木康広などの作品がある。
そして、明治時代の実業家・原 六郎が収集した近世日本絵画を中心とする、書、工芸、中国美術など、約120点の古美術が「原六郎コレクション」。
中国陶磁の国宝「青磁 下蕪花瓶」、江戸時代に多く描かれた美人図の先駆けとなる重要文化財「縄暖簾図屏風」、円山応挙が筆を揮った長大な絵巻「淀川両岸図巻」などが知られている。
20世紀後半の巨匠から21世紀のアートシーンで活躍する新進気鋭のアーティストまで、一度に見ることができるこの展覧会。どちらのコレクションも作家や作品名を聞くだけで、アート好きにはたまらない内容。
会期中には展示替えがあり、第1期(春夏季)と第2期(秋冬季)に分けて開催される。それぞれ鑑賞できる作品も異なるので、公式サイトをチェックしてみて。
「原美術館」の“顔”とも
再会できる
そして、「原美術館」にまつわるコンテンツもたっぷり。創立者の原 俊夫がキュレーションを手掛けた『現代美術に魅せられて(2018年)』の出展作品や、残念ながらコロナ禍で中止となってしまった、最後の展覧会に出品予定だったアートも公開する。
奈良美智が自らのアトリエをイメージしたインスタレーション作品《My Drawing Room》。「原美術館」の2階の奥の部屋にあった常設展示だ。時々、奈良本人が手を加えることもあり、多くの人気を集めていた。撮影:木奥惠三
また、「原美術館」ファンだった人に朗報。同館の“顔”でもあった、奈良美智、宮島達男、森村泰昌らの常設展示が「原美術館 ARC」仕様にリニューアルされて、カムバック。おなじみのアートと再び会えるとは嬉しい限り。他の常設作品や屋外作品も順次移設予定だそうで、今から待ち遠しい。
あの「カフェ ダール」もあります
「原美術館」の鑑賞後は、館内の「カフェ ダール」で庭を眺めながらコーヒーを飲むのがお決まりだった…という思い出を持つ人も多いのでは?もちろん「原美術館 ARC」にもあります!
群馬・渋川の「カフェ ダール」は、大きな窓から見える青々とした芝生のグリーンと、高い天井が特徴的。
メニューには、群馬県産の新鮮な食材を活かした特製サンドウィッチやパスタ、伊香保グリーン牧場オリジナルアイスクリームなどが並ぶ。
また、「原美術館」と同じく、週末には展覧会をイメージして作られた“イメージケーキ”の提供も。アートを観た後に楽しめる仕掛けも、さすがです。
併設の「ザ・ミュージアムショップ」。展覧会カタログやアーティストグッズをはじめ、日本の伝統技術や群馬ゆかりの作家を紹介するお土産やギフトが揃う。
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【出品作家(予定)】
【全期 2021年4月24日(土)〜2022年1月10日(月・祝) *展示替え期間有】
アニッシュ・カプーア「虚空」、草間彌生「ミラールーム(かぼちゃ)」、宮島達男「時の連鎖」、森村泰昌「輪舞(双子)」、奈良美智「My Drawing Room」、鈴木康広「日本列島のベンチ」、束芋「真夜中の海」
【第1期(春夏季) 2021年4月24日(土)〜9月5日(日)】
現代美術: 艾未未(アイ・ウェイウェイ)、カレル・アペル、アルマン、今井俊満、トム・ウェッセルマン、アンディ・ウォ ーホル、エロ、河原温、工藤哲巳、篠田桃紅、篠原有司男、ジャスパー・ジョーンズ、杉本博司、ジャン・デュビュッフェ、 ルイーズ・ニーヴェルスン、ナム・ジュン・パイク、ルチオ・フォンタナ、ジャクソン・ポロック、クリスト、三木富雄、ロバート・メイプルソープ、ロバート・ラウシェンバーグ、ジム・ランビー、李禹煥(リ・ウファン)、ロイ・リキテンシュタイン、ジェームス・ローゼンクイスト、マーク・ロスコなど
古美術: 狩野探幽「龍虎図」、円山応挙「淀川両岸図巻」など
【第2期(秋冬季) 2021年9月11日(土)〜2022年1月10日(月・祝)】
現代美術: 荒木経惟、安藤正子、アドリアナ・ヴァレジョン、フランチェスカ・ウッドマン、加藤泉、加藤美佳、アンゼルム・キーファー、ウィリアム・ケントリッジ、佐藤時啓、マリック・シディベ、周鉄海(シュウ・テイハイ)、崔在銀(チェ・ジェウン)、ジェイソン・テラオカ、ミカリーン・トーマス、蜷川実花、クリスチャン・ボルタンスキー、ジョナサン・ボロフスキー、増田佳江、やなぎ みわ、柳幸典、米田知子、横尾忠則、ピピロッティ・リスト、ジャン=ピエール・レイノー など
古美術: 狩野派「雲龍図」、狩野派「層嶺瀑布図」など