『オリーブ』の人気連載だった「ひとりオリーブ調査隊」のしまおまほさんと、実はまほ隊員に憧れていたという柚木麻子さんが今回、初対面対談。感激しながら、当時好きだった『オリーブ』についておしゃべりしました。
しまおまほ×柚木麻子「『オリーブ』に載っていれば正義だった!」
『オリーブ』に載っていれば正義だった!
柚木麻子(以下、柚木) 高校生の頃、しまおさんが「People」に出ていて、同世代でもう書く仕事をしてて、違う国のすごく輝いてる人みたいで憧れました。少し妬みもあって(笑)。
しまおまほ(以下、しまお) いやぁ、なんだか申し訳ない(笑)。『オリーブ』はいつ頃読んでたんですか?
柚木 一番読んでた時期は96〜99年頃。17時には家に帰ってアニメやドラマの再放送を見て、『オリーブ』を読むような地味な高校生でした。
しまお 私は12歳のとき、母が「読めば?」と持ってきてくれたのをきっかけに、91年以降は毎号読んでた。
柚木 高校生の頃の雑誌は早熟なものが主流だったんですけど、『オリーブ』は別に彼をつくれとも言わないし、すごくキラキラして見える反面、服を買えというプレッシャーもなかったから、地味な女子高生としてはトキメキもありつつ、焦らされない存在でしたね。
しまお 私にとっては憧れだったな。当時は個性派めざしてたから(笑)、他の子とは違うことをしたいというニーズに『オリーブ』はバッチリ応えてくれていたんですよね。 いまの私たちへとつながる、『オリーブ』の在り方。
柚木 『オリーブ』の本や映画のチョイスも絶妙に力が抜けてましたよね。紹介するものも、本当にその人の等身大のオススメを見せてるみたいな。気負いなく素直に好きなものを選んでいる感じがして、そこが好きだった。
しまお おしゃれのキーパーソンがいっぱい載ってたから、ひとりひとりの情報をじっくり読みこんでましたね。モノクロの小さな顔写真で顔を覚えて。誰が載ってるのかが重要だったんだよね。
柚木 私にとってはそれがしまおさんでした。「ひとりオリーブ調査隊」で紹介されていたところへ行ったし。
しまお 懐かしい〜。『オリーブ』って、おしゃれも含めて、文化の教科書みたいな感じだったよね。広告さえも『オリーブ』に載ってるからいい、みたいなのはあった。感覚的にすごく自分に合う教科書ができて、この雑誌が言うことは全部吸収しようと思った。
柚木 理解できなくても、『オリーブ』に載ってるから正義と思ってた。
しまお それはある!メジャーなものも排除せず斜めに取り上げるとか、斜めな目線の在り方を教えてくれた。
柚木 DIY精神をくすぐるところもあって、女の子的にはかわいいけど、家族はおびえる毒々しい色ボーダーのゼリーを提案したり(笑)。
しまお こうじゃなきゃいけない!的なことがあんまりなかったよね。
柚木 一言で言うと、『オリーブ』って怖くないんですよね。雑誌の体裁も、紙質がやわらかくて軽くて、ステープラー留めであったかさもあって。
しまお 顔に落ちても痛くないしね。失敗したショートカットでも大丈夫だよ、みたいな感じで、全部が完璧なお手本にはなってないんだよね。
柚木 私自身、作品で伝えたいことは山のようにあるけど、『オリーブ』みたいに怖くない作品を書いていきたいなと思ってる。あと文化系の女の子がこじらせる空気がまだなくて、非モテという意識も見えなくて、カルチャーも恋もあきらめない!みたいな強さがあるのが好き。「私にふさわしい男の子になってね」とか言えちゃう、ちょっと図々しいところもいいですよね。
しまお そのくらいが楽だったのかも。私は、それまで自分がどういうものが好きでどこにアンテナをはっていいのかよくわかってなかったんだけど、『オリーブ』がそれをわからせてくれたなって。モノよりも紹介している人やその景観をつくっている人に興味があって、そこには私だけが発見することもあったりして、その積み重ねで、いまの仕事につながる目線が養われたんじゃないかなと思うな。
- 90年7月3日号
「性格ふいっち講座」。しまおさん愛読、中島らもさんとわかぎえふさんのエッセイ。
- 92年12月18日号
「イラストレーター仲世朝子さんの大ファンだった」というしまおさん。
- 99年1月3日号
「ジャンクスタイルティータイム」。柚木さん、ボーダーゼリー作りに挑戦したとか。
- 97年10月3日号
「秋の夜のぜいたく時間」。「実日子ちゃんが作るパン粥に憧れた」と柚木さん。
- 左: 97年11月3日号 右: 99年9月18日
左: 「People」。しまおさん初登場。右: 「ひとりオリーブ調査隊」。
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しまおまほ
エッセイスト。1978年東京生まれ。97年『女子高生ゴリコ』(扶桑社)でデビュー。最新エッセイに、『マイ・リトル・世田谷』(スペースシャワーブックス)がある。
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柚木麻子
1981年東京生まれ。小説家。「ナイルパーチの女子会」で山本周五郎賞を受賞。「Butter」(新潮社)。最新刊は「さらさら流る」(双葉社)