Photo by Stephan Rohner. Courtesy of the artist and Luhring Augustine, New York / Gallery Koyanagi ©Janet Cardiff
群馬県の「原美術館 ARC ギャラリーA」にて、ジャネット・カーディフのサウンドインスタレーション作品『40声のモテット』が展示中だ。「間(ま)」の美意識を論じた建築家、磯崎新による空間との取り合わせにも注目したい。2025年5月11日(日)まで。
ジャネット・カーディフのサウンドアートが磯崎新建築と響き合う
Photo by Stephan Rohner. Courtesy of the artist and Luhring Augustine, New York / Gallery Koyanagi ©Janet Cardiff
群馬県の「原美術館 ARC ギャラリーA」にて、ジャネット・カーディフのサウンドインスタレーション作品『40声のモテット』が展示中だ。「間(ま)」の美意識を論じた建築家、磯崎新による空間との取り合わせにも注目したい。2025年5月11日(日)まで。
『40声のモテット』とは元々、16世紀イングランド王国の作曲家、トマス・タリスによる多声楽曲『Spem in Alium(我、汝の他に望みなし)』の別名だ。「ベネッセアートサイト直島」に置かれていた『ストーム・ハウス』でも知られる芸術家ジャネット・カーディフがこの曲に出合ったのは、1998年のこと。40部構成のハーモニーに魅了された彼女は、各パートを個別に聴くために、40台のスピーカーを用意することを思いついた。英ソールズベリー大聖堂の聖歌隊らと制作されたサウンドインスタレーションは、歌い手の位置での音楽体験を作り上げるものとなった。
2001年の発表以来、カーディフの『40声のモテット』は「ニューヨーク近代美術館」や「銀座メゾンエルメス フォーラム」などで展示されてきた。5声(ソブラノ、アルト、テノール、バリトン、バス)からなる8つの合唱団が奏でる歌い手それぞれの声が、別々に40台のスピーカーから流れる。スピーカーは楕円形に配置されるので、鑑賞者は自由に聴く位置を選んだり、移動しながら音に浸ったりできる。立つ位置を変えれば、40の音同士が耳に届くバランスも変わる。いわば、自分が動くことでミキシングをするようなものだ。
音がどのように空間を“彫刻”していくのかを探求するこの作品が、今回、磯崎新設計のギャラリーに置かれた。磯崎の建築には、「間(ま)」という日本の感性への考察が反映されている。ルネサンス期イギリスの作曲家、カナダのアーティスト、そして日本の建築家と、時と場所を超えたコラボレーションを味わいたい。
会期_開催中〜2025年5月11日(日)
時間_9:30〜16:30(入館は〜16:00)
会場_原美術館 ARC ギャラリーA
住所_群馬県渋川市金井 2855-1
休館日_祝日を除く木曜
料金_一般 1,800円、70 歳以上 1,500円、大高生 1,000円、小中生 800円
*同時開催中の展覧会『この、原美術館 ARC という時間芸術』との共通券。
Tel_0279-24-6585
Text_Motoko KUROKI