2018年10月5日、京都で現代アートの祭典「ニュイ・ブランシュ KYOTO 2018」が開催された。姉妹都市・パリと京都の交友関係を祝い、京都市内各所で展覧会やパフォーマンスなどを行うイベント。この記事では、10月5日の様子をレポートすると共に、まだ楽しめる会期の長い展覧会を紹介。
「ニュイ・ブランシュ KYOTO」で魅た!京都とパリ、アートを通じた交流
オープニングセレモニーの様子。門川大作京都市長をはじめ、駐日フランス大使のローラン・ピック、このために来日したパリ市副市長オリビア・ポルスキ、フランスのアートデュオ「レ・ベニュール」が参加。さらに、スペシャルゲストとして、京都観光おもてなし大使の倉木麻衣さんが登場し、京都・パリ友情盟約締結60周年の記念すべき年を祝った。写真提供: アンスティチュ・フランセ関西
左は門川大作京都市長のスピーチ。右は、倉木麻衣さん。着物姿が華やか!
貴重な作品がフランスからやってきたり、来日アーティストによるパフォーマンスが行われたり、「ニュイ・ブランシュ KYOTO」の期間はたくさんの出来事が起こるけれども、なかでも一番素晴らしいのは、両国の交流から、今までにない新しい作品が生まれること。パリの「アントワネット・ポワソン」と、京都の「かみ添」のコラボレーションは、まさにその好例だ。
アントワネット・ポワソン(ジャンバティスト・マルタン、ジュリー・ストルディオー、ヴァンサン・ファレリー)と、かみ添の嘉戸浩氏。「白=ブランシュ」をテーマにコラボレーションした作品を展示中。
18世紀フランスで栄えた「ドミノペーパー」を、古式で制作するアントワネット・ポワソンと、古来から襖や屏風などに用いられてきた「唐紙」の技術で様々な仕事を行うかみ添。「京都とフランス・パリ 白の世界」と題した本展では「ブランシュ=白」をテーマに、2種類の方法で技術のコラボレーションを果たした。一つは、かみ添が「雲母」と呼ばれる顔料で染めた紙をフランスに送り、その上からアントワネット・ポワソンが文様を印刷するという方法。光沢感のある雲母染めの上に白で文様が印刷された姿は、なんとも繊細でエレガントだ。
文様を横にして張り合わせた襖。光に反射して輝く様子が美しい。
もうひとつは、アントワネット・ポワソンの文様をもとに制作した木型で、かみ添が唐紙を制作するという方法。こちらは、カードやぽち袋、便箋、菓子箱など、様々な形で家に持ち帰り、身近なところで作品を鑑賞する贅沢を味わうことができる。
アントワネット・ポワソン×かみ添×鍵善良房の干菓子(300個限定)。
今回、初めて日本を訪れたというアントワネット・ポワソン。異なる素材、異なる技術でありながら、「唐紙」と「ドミノペーパー」の制作プロセスには共通点が多く、技術交流できたことの喜びを語ってくれた。
作品が見られるのは、ジェイアール京都伊勢丹「TEBACO」が期間限定で祇園に展開するスペース「祇園TEBACO」。2棟の建物を贅沢に使った空間には、ほかにも白をテーマにした日仏のクリエイターによる、アクセサリーやガラス、香道の道具等の作品が並び、高貴な「白の世界」を築いている。
【TEBACO × ニュイ・ブランシュ KYOTO 2018 京都とフランス・パリ 白の世界】会場: 祇園TEBACO
住所: 京都府京都市東山区祇園町南側570-107 空・鍵屋/ZENビル
会期: 2018年 10月3日(水)~16日(火) 12:00~18:00
休業日: 10月9日(火)
入場料: 無料
「工芸」や「職人による手仕事」は、伝統文化を重んじる京都とパリに共通するキーワード。「近年フランスでは、工芸がアートに歩み寄り、二つの境目が曖昧になりつつあります」と語ってくれたのは、パリの「Galerie Collection」のディレクターであるアンヌ=ローヌ・ルシーユ。現在艸居アネックスでは、Galerie Collectionと現代美術艸居との交流プロジェクトの現代美術工芸展が開催中だ。
Galerie Collectionのディレクターであるアンヌ=ロール・ルシーユと、ギャラリーを訪れていた日仏のアートシーンのキーパーソンMUZ ART PRODUCEのカルドネル佐枝さん。
「今までフランスでは、アートはコンセプトを見せるもの、用途があるものは工芸と、くっきりと分かれていました。だけど近年は、工芸がアートとしての地位を確立しつつあります。この展覧会では、素材もスタイルも多様な、フランスにおける最先端の美術工芸作品をご堪能いただけます」とアンヌ=ロール・ルシーユ。
艸居アネックスの展示風景。公募で選ばれた9名の作品を展示。
1868年に設立され、約6000名の作家が名を連ねるフランスの美術工芸協会「アトリエ・ダール・ド・フランス」のメンバーの中から、陶、ガラス、紙など、多彩な素材を用いた作品が並ぶ、見ごたえのある展覧会となっていた。
【Galerie Collection -フランス現代美術工芸展-】会場: 艸居アネックス
住所: 京都府京都市中京区河原町二条下ル一之船入町375 SSSビル3F
開催日程: 10月2日(火)~27日(土) 11:00~18:00
休館日: 日曜、月曜
入場料: 無料
「ニュイ・ブランシュ KYOTO」のプログラムには、フランス・パリに限らず世界中のアーティストによる展覧会が含まれている。京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAにて開催中の展覧会「Floating World」では、ベルリン在住の作家クリスチャン・ヤンコフスキーを招聘し、女流緊縛師の龍崎飛鳥さんをはじめ、京都を主な活動拠点とする若手作家や学生を交えながら制作した新作を展示。ズボンを脱いで縛り付けられた作品や、寝ている人に落書きをしたドキュメンタリーなど、クスッと笑える展覧会に仕上がっていた。
重力に逆らってものの見方を変える表現などで知られる、クリスチャン・ヤンコフスキー。ブリーフケースなど手持ちの荷物と共に、自らを縛り付けた作品。
会場: 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)
住所: 京都府京都市中京区押油小路町238-1
開催日程: 9月15日(土)~10月28日(日) 11:00~19:00
休館日: 10月15日、10月22日
入場料: 無料
ここでは紹介しきれないが、ほかにも10月中は京都の各所で「ニュイ・ブランシュ KYOTO 2018」の関連イベントを引き続き開催中。観光シーズンで、神社仏閣の特別公開等も多い秋の京都で、アート巡りを堪能して。
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木薮 愛
エディター&ライター。元『GINZA』編集アルバイト。『美術手帖』の編集者を経て、京都でフリーランスに。京都を中心に、各地のカルチャーイベントやグルメスポットを取材。アートフェスティバルの広報もつとめる。
Cover Photo: Antoinette Poisson, Hitomi Nagamatsu, Yuzo Imura Photo: Makoto Ito, Ai Kiyabu Text: Ai Kiyabu