さまざまなフィールドで活躍するアイコンにとって毎日でも繰り返し身につけたいユニフォームのような存在とは?十人十色のこだわりが光る、プライベートスタイルを披露。
脚本家・映画監督、寒竹ゆりにとってのユニフォームとは?
同じ服を着る人たち vol.7
寒竹ゆり

制作現場で説得力を加える
テーラードジャケット
「〈ヨウジヤマモト〉の黒ジャケットは、20代の頃に買って、10年以上愛用しています。気に入っている部分は身体の泳ぐビッグシルエット。当時はあまりなかったフォルムで、動きやすく、肩で羽織る感覚で着ています」
テーラードジャケットは寒竹ゆりさんがもっともたくさん持っているアイテムであり、シングルもダブルも、さまざまな素材、色のものがクローゼットに並んでいる。
「これを身につけると、自分が『らしいな』と思うスタイルに一番近づく気がします。オールスタッフの顔合わせやクランクインなど、緊張感のある節目の日に袖を通すことの多い一着です。映画のプロが大勢集まる制作現場で、監督はひとつの方向性を示して、皆に動いてもらわないといけない役割。若くしてデビューしたこともあって、年上の職人たちに対して説得力があり、シックなスタイルでいたいと思いました。かつて小津安二郎やアルフレッド・ヒッチコックが仕立てたシャツで指揮をとっていた、という洒落たエピソードも影響しているかもしれません」
目の詰まったウール生地でボタンレス。1枚だとマニッシュなので、スカーフやアクセサリーで少しフェミニンな要素を加えている。
「カジュアルな服の上に着るとかっちりして見えるし、逆にエレガントな格好に合わせるとほぐれる。その塩梅がいいんです。映画の世界はまだまだ男性社会ですが、肩肘張らずに“女性であること”を楽しみたい」
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寒竹ゆり
かんちく・ゆり>>脚本家、映画監督。 1982年、東京都生まれ。日本大学藝術学部映画学科在学中に脚本家としてデビュー。映画、テレビドラマ、MVなどで活動。監督・脚本を務めたNetflixシリーズ『First Love 初恋』が独占配信中。
Photo:Naoto Usami Text:Akane Watanuki