「ファミリーマート」がデザイナー落合宏理とともに手がける〈コンビニエンスウェア〉。2023年11月30日(木)、代々木第二体育館で行われたショーのバックステージにGINZAチームが密着!そこには、カラフルな装いと笑顔があふれていた。
〈コンビニエンスウェア〉ショーの裏側に潜入
落合宏理総監督による、コンビニ界初のファッションショー
![〈コンビニエンスウェア〉ショーの裏側に潜入](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fapi.ginzamag.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2024%2F01%2Ffamifes-main.png&w=3840&q=75)
コンビニの衣料品といえば、「コーヒーをこぼした!」「今日はこのまま泊まりだ!」といった緊急時に頼るものというイメージが強かった。が、2020年に「ファミリーマート」からローンチされた〈コンビニエンスウェア〉は、その常識を塗り替えつつある。ファッション的選択としてコンビニで服を買うという文化を作る─それがクリエイティブ・ディレクター落合宏理さんの目指すところだ。〈ファセッタズム〉デザイナーとしても活躍する彼が作る製品は、ポップな色合いのソックスを中心に、文字通り老若男女に愛用されている。そんな〈コンビニエンスウェア〉がファッションショーを開催すると聞き、GINZAは代々木へ駆けつけた。「ファミリーマート」のさまざまな挑戦を紹介する「ファミフェス」。そのメインイベントとして行われたショーの一部始終をお届け!
会場は、丹下健三が設計した代々木第二体育館。円形のホールの中央に、これもまた円形の本物のコンビニが設置されている。その周りがランウェイだ。
「コンビニは、24時間どなたでも使える場所。だから、会場にいる皆さんが同じ視点でショーを見られる形がいいと思い、ランウェイもサークル状にしました」(落合さん)
現地に到着したGINZAチームがまず向かったのは、メイクルーム。
小さな子どもやティーネイジャー、グレイヘアが素敵なマダムなど、実に幅広い年代の人がキャストとして集まっている。モデル事務所から来ている人もいれば、知り合いを通じてスカウトされた人も。家族やカップルで出演する人たちもいる。ヘアメイクの順番を待ちながら、おしゃべりしたり、遊んだり。まさに祭りの直前。「ファミリー」感あふれる温かなムードで満ちている。
それからフィッティングルームを覗くと、ヴィヴィッドカラーの洋服がずらりと並んでいる。キャストそれぞれのスタイリングがハンガーごとにまとめられ、脱いだ私服を入れる紙袋も用意されている。取材班はこの時点ですでに、〈コンビニエンスウェア〉のラインナップの幅広さを感じ取り興奮。
とうとう開始時間に。バックステージには出演者が並び、落合さんを囲んでスタートの合図と拍手の音が響く。明るい音楽にのって、キャストは一人ずつランウェイへ。それぞれの個性を活かしながら、あくまでも自然体で歩く。
「コンビニは誰もが日々使う場所。そして、一人一人コンビニに行くドラマがある。そのドラマの舞台として会場に本物の店舗を置き、日常の一コマをファンタジー的に表現しました。『洋服って楽しんだよ』というメッセージが伝わればいいなと思います」と落合さん。
豪華なゲストも登場した。「ファミリーマート」のCM出演する八木莉可子さんや吉田鋼太郎さん。また、落合さんとの親交も深い太田莉菜さんや柳俊太郎さん、又吉さんといった顔ぶれもランウェイウォークを楽しんだ。
〈コンビニエンスウェア〉の世界観が見せるのは、カラフルで機能的で、万人に開かれた洋服。バックステージで気になった人たちをキャッチ!スタイリングのヒントにもなりそう。(*写真にはファッションショー限定カラーやファミマ!!麻布台ヒルズ店限定商品も含む。)
ショーが終わった会場を包むのは、「祭りのあと」の静けさ…ではなく、DJ・Licaxxによる音楽。そんな中、円形の「ファミリーマート」の中を偵察へ。新作を中心に〈コンビニエンスウェア〉の商品が並び、その楽しい世界に浸ってしまう。
「ファミフェス」は、「ファミリーマート」の画期的な取り組みを広く紹介するもの。ショー会場外では、〈コンビニエンスウェア〉のほか〈ブルーグリーン〉など各プロジェクトの展示が設置されていた。
多様なキャストがあくまで自然にランウェイを歩き、生活の中のファッションに気づかせてくれたショー。その裏側も、始終コージーで、温かな空気に包まれていた。そこには確かに、デイリーに愛する身近な存在としての洋服があった。それこそが、〈コンビニエンスウェア〉が体現しようとする価値でもある。
「ファミリーマートを使うのは、年間のべ約55億人らしくて。そんなに多くの人に届くチャンネルがあるというのはすごいこと。SNSもいらないのではないか、と思うくらいですよね(笑)。商品自体が、そのままお客様とのコミュニケーションの媒介をしてくれる」
コンビニという場では、ファッションファンだけではなく、日本中のあらゆるバックグラウンドの人を対象としたものづくりが求められる。ただ、やはり「気持ちを込めたものは通じるんです」と話す。
「たとえば、〈コンビニエンスウェア〉でピンクのソックスを出そうとしました。それまでコンビニの衣料では黒が売れると言われていたんですが、実際発売してみると、ピンク色は、特に春先などにかなり人気が出ました」
先入観を打ち破り、「コンビニでおしゃれをする」という新しいカルチャーを少しずつ浸透させていく。とはいえ、デザインの基本方針はあくまで「ベーシックなものを楽しむ」こと。新作アイテムも、彩り豊かではあるがシルエットなどはとてもスタンダードだ。大好きな作品とのコラボレーションでも、受け取り手のことを考えた発信を忘れない。
「『ストレンジャー・シングス』の靴下など、もう本当に自分が好きなことをやらせてもらっていますが、そこでも、ロゴは使わずに色だけで世界観を表現しています。僕は大ファンですが、日本全体で見たら知らない人の方が多い作品。だから、『このデザインいいな』と手に取った人が、後からドラマを知ってくれたら、くらいのアプローチでやっています」
毎日を今よりちょっと良くする、日用品としての洋服。そんなファッションのあり方を感じられるバックステージだった。