ミラノ発ジュエリーブランド〈アリータ/ALIITA〉で、愛溢れる世界観を展開するシンシア・ヴェルチェス・カスティリオーニ。ホリデーコレクションを携えて来日した彼女に、創作に込めたメッセージや、クリスマスへの思いを語ってもらった。
〈アリータ〉デザイナー・シンシアが贈る温かな物語
「家族」のように大切にしたいイタリア製ジュエリー
子どもの頃の、絵本のページをめくるワクワク。〈アリータ〉のショーケースを見てこみ上げてくるのはそんな感情だ。シンプルな線で描かれた恐竜と猫がいると思えば、隣では小さなスケート靴やキノコがチェーンにぶら下がっている。ジョイフルなだけでなく郷愁をも覚えるデザインは、どのように生みだされているのだろうか。
「私が何よりも大切にしているのは、感情や情熱をプレゼントすることです。従来、ジュエリーというとどこか冷たく硬質な、遠いものという印象があったと思います。そのイメージを変え、笑顔を届けるアイテムを作るために〈アリータ〉を始めました」
シンシアは、そう言ってチャーミングに笑った。
〈アリータ〉の製品は全てイタリア製。彼女がベネズエラから移住して、15年ほどになるという。ブランド名は、ベネズエラに住むグアヒロ族の言語で「大切なもの」を意味する言葉。けれど実は、「Italia」という語がアナグラムになって隠れてもいる。鮮やかな色使いやポジティブなムードは、南国で育ったバックグラウンドを活かしたもの。そこにシンシアはイタリアらしい品や遊び心を重ねていく。
「クリエイションにおいては、直感派ですね。決まったガイドラインはないので、その時々に自分がいいと思うモチーフを取り入れています。ただ一貫しているのは、タイムレスであるということ。今日私がしている雪だるまのネックレスは2023年のホリデーコレクションで登場したものですが、一年中身につけたいと思っています。愛着が湧けば、季節やタイミングは関係なくなるのです」
シンシアにとって、〈アリータ〉のアイテムは家族のような存在だという。
「カシーナという家の形をした定番モチーフに表れているように、ホームそして家族というものがブランドの核にあります。毎シーズン、新しい仲間がファミリーメンバーに加わる、そんなイメージです」
それは、幼い頃に憧れた童話の世界そのもの。2023年の冬、「家」に新しくジョインしたのは、スノーマンやジンジャーマン、幸運を運ぶ2つの星に、コロンとしたオーナメントたち。ホリデーシーズンへの愛が、小さなプロダクトから溢れてくる。
「クリスマスが大好きで、11月頭にはツリーを出しているくらい(笑)。家族や友人と過ごす温かな時間は私にとってかけがえのないものなんです。毎年、夫の家族とお祝いをしたあとはベネズエラの島に住む母のもとを訪れます。今はバラバラに暮らす兄弟たちも、一年に一度この時期だけは集まれるんです。私は故郷から離れたところに住んでいるのでノスタルジックになるときもありますが、やはりポジティブでいたい。そういった気持ちと、来年も良い年にできますようにという思いを、ホリデーコレクションには込めています」
〈アリータ〉で見つかるのは、大切な時間をともにするピース。
「ぜひお店に来て、実際にジュエリーに触れ、感じ、自分の"ファミリー"に出合ってほしいです」
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Photo_Hikari Koki Text_Motoko KUROKI