今季のNYコレクションで一番面白かったショーは間違いなくHood By Airだった。
なんでだろうか、笑ってしまう。いや、ふざけているわけではない。胸が高まって思わず笑ってしまう、という感じだ。なにせこんな無秩序で、破天荒なショーは、リアルクローズが売りのNYではそうそう見ることができない。
ナオミ・キャンベルやジェイデン・スミスといった大物がファーストローに座り(回を重ねるごとに来場するセレブの大物度が上がっている)、会場がざわついてきたところでショーがスタート。

Jussie Smollett, Naomi Campbell
モデルたちは、髪から顔にかけてべとっとジェルが塗りたくられ、出てくる服は切り裂かれたようなシャツやブリーフに真っ青なロングパーカーを組み合わせ、また歩く度にガサゴソと音がするようなビニール地のセットアップなどなど、とにかく攻めている。
そして今回はショーのスポンサーにPorn Hub(有名なポルノサイト)を迎えるという画期的な手法がとられたこともあって、Porn Hubのロゴ入りタンクトップや”Wench(淫らな女)”とデカデカと入ったシャツなども登場した。
そして極めつけは、靴! ダブルブーツという名がついている2足を合体させたような、実に歩きづらそうな靴。実際モデルたちの歩き方も異常で、それに続いて腕の骨折時に首からかけてサポートするストラップ風のものがついたジャケットなんかが登場すると、もう笑ってしまう。
しかも、モデルとしてあの写真家のヴォルフガング・ティルマンスも登場。無茶苦茶なカオスである。
この服からモデルに至るショーのすべてに投入された大小様々な”違和感”こそ、Hood By Airが今NYでずば抜けて注目されている所以だ。そしてそんな盛りだくさんな中にあっても不思議と浮ついた感じがしないのは、間近でみる服のその選び抜かれた素材感や計算し抜かれたバランスとディテールに真剣さを感じるからだろう。
デザイナーはまだ若干28歳のシェーン・オリバー。今NYでも最も注目度の高いゲイカルチャーとブラックカルチャーの両方を一挙に引き受けて、新しいカルチャーをファッションで発信しようとしている。彼が手探りながらも自分のクリエイションに忠実なその姿勢に、観客は微笑み、どんどんと引き込まれていくのである。