大好きなあの人と、気のおけないみんなや家族と、時には一人でグラスを傾ける。私たちの至福の瞬間を彩るドリンクは、暮らしに寄り添う存在でもあります。地域に根差し、新たなムーブメントを起こしているメーカーの取り組みを3回にわたってご紹介。前回の記事は常陸野ネストビール編。
ずーっと呑みたい!サステイナブルなお酒たち Vol.3 RISE & WIN Brewing Co.のクラフトビール

ビールを飲んでゴミを減らそう!
2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト」宣言をした徳島県上勝町。家庭から出たゴミは45の区分があり、その80%近くがリサイクルをされている。およそ1500人が暮らす地に、マイクロブルワリーの「RISE & WIN Brewing Co.」が誕生したのは2015年のことであった。
創設者の田中達也さんは徳島市の出身で町との縁はなかった。でも、心の奥で過疎を発端に衰退の一途を辿る県内の状況を止めようともがいていた。そんな折に前町長と出会い、ゴミを減らすために工夫を凝らす小さな町の活動に触れる。環境問題への取り組みこそが誇りと財産であると感じ、多くの人に広めようと決意。収集所に集まるゴミの内訳を調査し、廃棄の対象として出されるもののほとんどが包装にあることを知った。
そのため、買い物からアクションを変えようと“量り売り”に着目し、「RISE & WIN Brewing Co.」の前身である「上勝百貨店」で醤油や砂糖などを販売。だが、その時はまだ容器を持参してまで調味料を求めに来る者は少なかった。そんな折、出張先でクラフトビールと出合う。土地の特性や作り手の個性が肝となるドリンクに光を見出した田中さんは、醸造所がひしめく聖地・ポートランドへ。現地のブルワリーでマイグラウラーを片手にビールを飲みに来る客を何度も見かけ、グラウラーを持参する販売スタイルこそが上勝町の理念を体現できるものだと確信。醸造を始めたのであった。
上勝の特産をぎゅっと詰め込んで
「RISE & WIN Brewing Co.」のクラフトビールは、NYからやってきたブルーイング・ディレクターのライアン・ジョーンズさんを中心に醸造。この町ならではの「上勝晩茶」や柑橘類の柚香(ゆこう)などを原料に採用している。2017年には第二工場も設立され、飲食店への卸業も始めた。町内の新たな雇用先として機能するだけでなく、いまではクラフトビールづくりを目指す若者が県外から移住してくるケースも増えたそう。10年後にはゴミゼロと過疎が解消されているかもしれない。
東京タワーの麓で「ゼロ・ウェイスト」の息吹を感じよう
2016年には直営のレストラン&ビアバーをオープン。上勝町特産の杉やゴミステーションから回収した空き瓶などが店内を彩る。〈KAMIKATZ〉だけでなく、オリジナルグラウラーボトルによる量り売りも実施。マイボトルを持参して足を運んでみて。
RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store
住所:徳島県勝浦郡上勝町大字正木字平間 237-2 営業時間: 水~金11:00~17:00(17:00以降予約制)、土日祝10:00~18:00(18:00以降予約制) 休: 月・火 TEL: 03-6441-3800 HP: https://www.kamikatz.jp/
RISE & WIN Brewing Co. KAMIKATZ TAPROOM
Text&Edit:Mako Matsuoka