さつまいもが出回ると、毎年「キタ!」と思う。
ひょうきんな形、皮の紫色、ごつごつとした手触り、どんな種類でも一本ずつ顔が違うところにも惹かれる。しばらく飾っておきたいくらいだけれど、そうはいかない。
待ち構えて作るのは蒸かしいも。がんがん熱い湯気の立つ蒸籠に皮つきのまま入れて、鳴門金時などのでかいヤツなら30〜40分、じっくり強火で蒸す(ラップして電子レンジで加熱しても、もちろん)。竹串で刺してスーッと通ったら、それで出来上がり。
粗熱がとれるのを待ち、素手でぽくっと折る。目に染みる断面の黄色のまぶしさよ。見とれながら皮の上からナイフを入れ、バターのかけらを切り目に差し込むと、またたく間にとろーっと溶ける光景がまたうれしくて、さあさあ。大きな口を開けて熱いところをがぶりと頬張る。これですよ。この瞬間を待っていた。
昔の記憶を何度でも思い出したい。たとえば、石焼きいも屋のおじさんが使い古しの軍手をはめた手で一本つかみ、新聞紙にがさごそ包んで渡してくれる光景。そのときのわくわくした気持ちが忘れられず、アルミホイルに包んでグリルで焼いたりもする。
さつまいもの効能はいいことだらけだ。とりわけ食物繊維やヤラピンの活躍はすごい。さつまいもを食べ始めると、てきめんにお通じ力がハネ上がります。
炊き込みごはん、さつまいもとりんごのサラダ、豚汁……何でもこなす千両役者だが、私の定番のレモン煮を紹介したい。