ついついチェックしちゃう芸能人のファッション。最近ではSNSによって、衣装として着ているものだけでなく、その注目は私服にも向けられるように。自由に服を楽しんでる人を見ると、勝手に親近感が湧いちゃうわけです。そんな“服バカ”な芸能人へのインタビュー第3弾! 今回はTHE BAWDIESのROYさんとTAXMANさんに、学生時代から掘り続けている50’s・60’sイギリスカルチャーへの愛を語ってもらいました。
THE BAWDIES・ROYとTAXMANの50s & 60sイギリスカルチャー愛。コレクターな日々は退屈と無縁

――お二人がファッションに興味を持ったきっかけは?
ROY 僕の学校は幼稚園から大学までエスカレーター式で、私服登校だったんですよ。先輩がめちゃめちゃおしゃれだったので、そこからの刺激っていうのはすごく大きかったですね。高校の先輩も同じ校舎にいるのでその真似をするっていうところからはじまって、中学校2、3年生の頃は休みの日になると原宿に行って当時のドメスティックブランド、〈アンダーカバー〉、〈グッドイナフ〉、〈エレクトリックコテージ〉に並んで買ってましたね。それで小学校のときから溜めてたお年玉が一気になくなって。
――私服で登校って大変そうです。
ROY 週に2日、同じ服やTシャツを着たもんなら「それめっちゃ気に入ってない?」って言われるんですよ。それがすごい嫌でしたね。
TAXMAN 嫌だよね。今日着てるこのTシャツも気に入ってて、たまたま撮影のタイミングで着ることが多かったから、お客さんに「いつもそれ着てますね」って言われたことがあって。それを言われて以来、今日初めて着たもん。
ROY あの一言、嫌だよね。本当に気に入ってる服ってインスタにあげないもん。でもこいつ言ってくるんですよ。だからお前の前で着なくなった服、結構あるからな!
TAXMAN お互い言うのやめよう(笑)。僕は普通の公立中学校に通ってて、そういうブランドを買うっていうのはなかったんです。ただ2歳上の姉がいて、わりとおしゃれするのが好きだったので、僕がダサい服着ると怒るんですよ。それで一緒に買い物行って「あんたはこういうの着たほうがいい」って言われて、自分もどうせだったらみんなよりカッコよくなりたいなと思ったんですよね。地元が町田なんで、休みの日に下北の古着屋さんを見に行ったりしてました。
――高校からROYさんたちと同じ学校に入られたということですが、私服での登校に戸惑いはありました?
TAXMAN 軽いカルチャーショックみたいなのは受けましたね。でもそれまで周りに服が好きな友だちがいなかったので、そういう話ができる友達ができて普通に楽しかったです。ただファッションありきっていうよりも、僕らバスケ部なんでバスケのことだったり、聞いてる音楽が一緒だったので、そこから服の話をしたりって感じでした。
――そこからイギリスのカルチャーに興味を持ったきっかけは?
ROY バスケ部を引退するときに、他に情熱を注げるものを探してたら、たまたま入ったレコード屋さんで流れた音楽に衝撃を受けて。それがザ・ソニックスっていうバンドだったんですけど、俺らは現代の音楽だと錯覚して「これは流行る」って思ったのに全然情報が出てこないし、チャートにも上がらない。これはなんだろうねって調べたら、それが40年くらい前の音楽だって知って。そこから音楽だけじゃなくてその時代のカルチャーも全部好きになっていきましたね。60年代のスタイルを真似てみんなでマッシュルームカットしたりとか。まあ、ちょっと彼はできないんですけど。髪質の問題で(笑)
TAXMAN できるんですけど、別に。できますよ(笑)
ROY できます?
TAXMAN 天パーのマッシュルームだっているでしょ?ウェーブした感じ、癖っ毛の。
ROY 癖っ毛のレベルじゃないじゃないですか(笑)。
TAXMAN おさめることもできるから!
ROY まあ(笑)、そういうのに流れていきましたね。それが高校の終わりくらい。その頃って恵比寿に〈シュプリーム〉ができたくらいなので、裏原系っていわれる人たちがスケーターファッションに流れていって、先輩もみんなスケーターだったんですよね。学校もスケボーでくるみたいな。ただ俺らはそれよりもバスケが好きでスケボーやってなかったから、そっち行きづらかったっていうのもありました(笑)。
――これだ!って思ったのはどういう部分なんですか?
ROY まず音楽の部分なんですけど、僕らの世代はより音楽がデジタルっぽくなっていくというか、クラブ文化が盛んになっていたときで、ロックバンドの生々しさみたいなのがあんまり求められてないのが一般的だったんです。でも60年代とかって、今ならいくらでも作り出せる音の厚みとか迫力が、演じてる側の熱量で伝えるしかない時代で。それが生々しくてめちゃめちゃカッコよくて、パンクが生まれる前の音楽なんだけど、すごくパンクに感じたんですよね。俺らはたまたま出会って衝撃を受けることができたけど、知らないでそのまま通り過ぎていく若者たちも世界中にいっぱいいる。でも触れたら衝撃を受ける人は多いと思ったんで、今俺たちがこの音楽をやって、ロックンロールの生々しさを伝えたらいいんじゃないかと思ってバンドを組んだんです。その生々しさとか人間臭さみたいなのが、あの時代のカルチャーからは感じるんですよね。ファッションも成功例みたいなのがあった時代ではないので、みんながはみだした感覚でやってく、すごい芸術的で面白い時代で。音楽もこうやったらこうなるよねっていうのがないから、実験的になんでもやっちゃえみたいな感覚が僕らにはパンクに感じて、すごいカッコいいと思ったんです。
――特に影響を受けたものはありますか?
ROY 当時の作品ではないんですけど、モッズの代表的な映画「さらばの青春の光」。あれを観てモッズコートを探しましたね。この時代にモッズコートって言われて売ってるものってモッズコートじゃないんですよね、実は。シルエットがすごい現代にあわせてタイトになっていて。実際は軍隊が使ってたもので、スーツの上に着るからめちゃめちゃでかいんですよ。それを知ってるのと知らないのじゃ違うっていうこだわりを見つけたりもしてました。
TAXMAN 僕も「さらば青春の光」とかガチガチにその当時のものを描いてたものにも影響を受けてるんですけど、もとを辿ると高校の頃に観た「トレインスポッティング」ですかね。そのユアン・マクレガーの格好がめちゃめちゃ好きだったんですよ。スイングトップとスキニーを着て、ボロボロのコンバースを履いてて、なんか分かんないけどカッコいいなと思ってて。のちのち自分たちが60年代の音楽聴くようになって、あのスイングトップってモッズじゃんって気づいたんですよね。それでユアン・マクレガーが着てたようなスイングトップみたいなのを買ったりして。
ROYさんの今日の私服
――当時はどういうところで服を買ってたんですか?
ROY 古着屋ですね。高円寺も行けば、原宿でも見たり。町田も下北も行ったし。
TAXMAN レコードと一緒で、高円寺は結構サイケとかモッズとか好きな人も多いんですよ。
ROY 音楽好きな人が多いよね。
TAXMAN それで、そういう古着屋もあるんですけど、結構サイケよりな店が多くて。その中でレコードをディグるみたいに探してくと、ヴィンテージのシャツが混じってたりとかするんですよ。だからとりあえず古着屋があったら見てたよね。
――今はどんなファッションが多いですか?
ROY TAXMANはいまだにヴィンテージのものを買ったりしてるんですけど、僕はそれを途中で諦めるんですね。それは当時の外国の方が穿いていたスキニーパンツとか、みんなが穿いてたから僕も穿いてたんですけど、僕、下半身がめちゃめちゃ特殊な太さで、似合わないっていう。
TAXMAN プリケツなんだよね(笑)。
ROY そうなんですよね。だから結局、日本人の体型に合うっていう感覚でドメスティックブランドに落ち着いて。ここ5年くらいは〈サンシー〉が好きで、ずっと着てますね。あとは〈ヨーク〉とか〈コモリ〉とか。そこに60年代の〈バーバリー〉のコートを織り交ぜたりして着るのが、自分らしいのかなって思ってます。
TAXMAN 僕らの音楽が50’sや60’sの音楽に影響を受けつつも、現代に生きる僕らが鳴らしてる音だから、今のニュアンスを出さなきゃいけないなっていうのがあって。それと一緒でヴィンテージも着るけどそれに今の服もあわせるっていうのが結構好きですね。買うときも、ルーツがブリティッシュにあるブランドが好きで、〈ジョン ローレンス サリバン〉とか〈リトルビック〉の洋服をよく着てます。〈リトルビック〉はデザイナーの馬渡(圭太)くんが僕らと同世代で同じような音楽が好きなんですよ。僕がヴィンテージで見つからないものをちゃんと現代的に具現化してくれてるんで、「こういう服ほしかったのよ」っていうものが見つけられるんです。今時のファッションには全然敏感じゃなくて、それよりもレコードとか昔の人の本を見る中で発見したものに魅力を感じることが多いです。
ROY 音楽もそうなんですけど、掘ってるものって相変わらず昔のものなんで現代のものって追ってないんですよね。生きてるのは今だから匂いみたいなのは感じてますけど、現代のものからヒントを得るってことはほぼないんです。あと昔の音楽に影響を受けた今の人の作品ってひとつの答えみたいな気がして、自分たちもその答えを出しているところなので、現行の人を追わないっていうものあるかもしれないですね。
――THE BAWDIESさんといえば全員お揃いのスーツですが、どのように決めてるんですか?
ROY みんなで話し合ってますね。今回は茶色のセットアップで中はオレンジみたいなシャツに緑のネクタイなんですけど、これは60年代のスモールフェイセスっていうバンドのスティーヴ・マリオットっていうシンガーが、1stアルバムと2ndアルバムのジャケットで着てたスタイルをもとに自分たちで少し変えて。
――それは曲とリンクしてる部分があったりするんですか?
ROY 作品とっていうよりも、気分ですね。前回は黒だったので今回明るめでいこうかなとか、その程度(笑)。ただ一回決めると1年間くらいそれを着続けるので、覚悟を決めて考えてますね。
――ライブ用に工夫があったりするのでしょうか?
ROY 今は年間通して着るので、夏も冬もいける中間を取るんです。だから結局、夏は暑いし冬は寒いんですよ。この問題は常につきまといますね。
TAXMAN ただ破けにくいように膝だけ生地を厚くするとか、そういう工夫はこの10年間の中でちょっとずつ改良を加えてます。
ROY モッズスーツの基本的な形なので、そのおかげか、僕らってあんまり体型が変わってないんですよね。あとは僕以外の三人がスラッとしてるので、実はコンプレックスみたいなのがあって。油断するとすぐ太るんで……。だから4人ともシュッとしてますよねって言われると、僕はいつもちょっと傷つくんです。でもそうやって見ていただくのは成功してるなって(笑)。
TAXMANさんの今日の私服
――まさに、シュッとしてると思って見てました(笑)。
ROY ありがとうございます!そのまま夢を壊さないように頑張ります(笑)。
――スーツはどこで作られてるんですか?
ROY インディーズでデビューする直前に作った1着目のスーツは、憧れていた梅ヶ丘の洋服の並木ですね。スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)もミッシェル(・ガン・エレファント)もそこで作ってたかな。今だと芸人さんも衣装も作ってるお店なんです。そのあとは僕らを見つけてくれたうちの社長の友人で、〈アングラサッド〉ってブランドをやってる清水護さんに作っていただいてます。
――高校生の頃から50’s、60’sのカルチャーをずっと追いかけていて、今になって新たに知ることもありますか?
ROY 発見ばっかりですね。僕はドーナツ盤って言われるもののコレクターなんですけど、世界中のサイトを含めレコード屋さんをずっと見てると、毎日のようにこんなのあったのかって発見があるくらい一生かかっても聴ききれないくらいの世界で。だから飽きることもないですし、魅了され続けてるから、自分も新しいものが作れるんだと思います。50年前にこういう音楽があったんだって知ったことが人生のきっかけになったので、誰かのそういうきっかけを作りたいし、またそんな衝撃を味わいたいって気持ちがあって、ずっと掘り続けてますね。
TAXMAN さっきからヴィンテージ、ヴィンテージってうるさいと思うんですけど(笑)、ヴィンテージのものがすごく好きなんですよ。もちろんギターもそうだし、バンドで携わる機材も家具もそうだし。だから昔の映画とか本を見て、こういうものがあるんだって発見はいつもありますね。
ROY TAXMANって呼ばれる前、一時期デッドストックって呼ばれてたんですよ。
TAXMAN 言いまくってたから(笑)。だってデッドストックってすごくないですか?当時のものが、そのままの状態であるって信じられないじゃないですか。昨日も別に花とか全然好きじゃないのに、ヴィンテージの花瓶を買ったんですよ。
ROY そういうところあるんですよね、デッドストックを追うがゆえに、興味ないものまで手を伸ばすっていう(笑)。いやわかるけど、気持ちは。
TAXMAN すっごいカッコよくて、今はいらないけどいつか何かに使えるかもしれないって(笑)。
ROY 一番ひどい時期は、デッドストックのハワイの置物を買おうとしてて。いや、ハワイ関係ないし、行ったことないだろって(笑)。
TAXMAN あれはさすがに買わなかった(笑)。でもレコードだってすごいこだわりがあるでしょ。
ROY オリジナルで、さらにいうと本でいう初版みたいなのがあって、マトリックスナンバーっていうんですけど。その番号の若い順でプレミアが全然違うんですよ。でもプレミアが高いから集めたいのではなくて、若ければ若いほど、その当時のアーティストが作った時の音、本人たちが聞いてた音に一番近いんです。当時の空気感も真空パックされてるような気がするんですよ。
――もう、永遠に掘り続けられますね。
TAXMAN そうなんですよ。
ROY クロマニヨンズの甲本ヒロトさんもレコードを掘りまくってて、「僕らはレコードとかロックンロール、一生かかっても掘りきれないようなすっごい深い世界にはまってるから、毎日退屈することってないんだよね。今、若者たちがなんか面白いことないかな、退屈だねって呟いてる中で、僕たちはそれを呟く必要がなくて、毎日キラキラしたドキドキした気持ちでいられるっていうのは最高のものに出会えた幸運だよね」って言ってて。僕はもう、泣きながら、「はい!」って(笑)。
――では最後に、お二人にとってファッションとは?
ROY 音楽でもファッションでも、自分が好きなものを見つけたときのワクワク感ってあるじゃないですか。自己満足でしかないと思うんですけど、それを身にまとってるときとか、ほしかったレコード1枚を手に入れたときの自分ってすごいポジティブに輝いてるんですよね。そのポジティブなテンションの状態で曲を書いたら、そのままの色が曲に出たりするんです。THE BAWDIESをカッコいいって思ってもらえるのももちろんうれしいけど、みんなを笑顔にするロックンロールっていうのが僕らが一番伝えたいところで。そういうポジティブなエネルギーを充電するっていう部分で、映画を観たり音楽を聴くことももちろんあるんですけど、その中でファッションって結構大きいのかなって思いますね。私服をインスタにアップすることもあるんですけど、ここのブランドを着てますって基本的に書かないんですよ。それを教えたいっていうよりは、ただ自分がわくわくしてるから、その姿を見てほしいっていうところが大きいのかなと思います。
TAXMAN ファッションとは……、そういうインタビューですもんね(笑)。僕らの場合って音楽ありきのファッションなんですよね。ファッションに興味を持ったのも音楽の影響が大きいし、それと同時に自分が好きな音楽やってる人ってカッコよくあってほしいというか、ダサい格好してほしくないって思うんですよ。だからまあ、音楽の一部、ですよ(笑)。
ROY ふわっとしてますね(笑)。
TAXMAN ダメですか?
ROY それは僕が決めることじゃないです(笑)。
TAXMAN 音楽をやってるからファッションもちゃんとしてたいというか、こういう音楽やってるのにファッションはこれでブレてるなって思われたくないというか。直結してるものだから、音楽の一部なので。ね?
ROY 何度も言い直してるけど、ゴールは一緒なんですね(笑)。
🗣️
THE BAWDIES
2004年に結成。敬愛するリズム&ブルースやロックンロールをルーツに楽曲を生み出し続け、今年デビュー10周年、結成15周年を迎えた4人組ロックンロールバンド。11月27日にはアニバーサリーイヤーの締めくくりとして、アルバム『Section #11』をリリース。12月6日から来年4月にかけて「Section #11 Tour」を開催。
Photo:Yuya Shimahara Text:Sonoko Tokairin