演劇作家の藤田貴大が主宰する「マームとジプシー/MUM & GYPSY」。その新作が5月8日に開演を迎える。「Curtain Call」は、これまでフィクションとしての演劇作品を紡いできた藤田が、演劇そのものを題材にする演目だ。そしてなんと、これをもって最後の書き下ろし作とする、という知らせが…。
最後の作品!? 藤田貴大が語るマームとジプシー最新作
カーテンコールの後も「今」は続いていく

幕が下りた瞬間、謎が残ると思います。
「開演したら、終わるんです」
「マームとジプシー」の新作「Curtain Call」について、藤田貴大がそう語る。開演したら終わる!?
「舞台は、とある架空の公演のバックヤード。“役者”が劇場に到着してから開演に向かうまでの時間が描かれます。あくまでも開演までの準備風景なので、お客さんはその“公演”を観ることはない。何を準備していたんだろう!?って謎が残ると思います」
キャストの青柳いづみや成田亜佑美らが演じるのは“役者”や“スタッフ”だ。舞台上にたくさんの“舞台衣装”が並んでいるけれど、演者は最後までそれらを着ない。そしてラストのカーテンコールで……
「別にすごいオチがあるわけじゃないんです。でも最後の展開を思いついた時に、“これちょっとカッコいいかも”って興奮して(笑)。それが今回の作品を創ることにしたきっかけです」
稽古場に置かれた机の上には、藤田自身が選び集めたヴィンテージの器やサボテンが、自身の手でセンスよく並べられている。照明やフットライトなどの小道具は、実際に昔の舞台で使われていたという超レアなヴィンテージだ。
「舞台で使う小道具や家具はいつも、自分たちで探して買って倉庫に保管しているんです。だから公演が終わっても捨てるものがない。一般的なお芝居だと、いわゆる大道具を建て込んで壁や部屋を作るんだけど、僕たちはそういうこともほとんどしないですね」
大道具は使わず、小道具は借り物ではなく自分で選ぶ。マームの世界観はそうやって作られている。
「僕、物と人を等価値に考えているんです。観客は物と人を同時に観るはずだから。“この人にこのセリフを言わせたい”と“ここにこの椅子を置きたい”は同じだと意識しておかなくちゃいけないと思っています」
Photo_Wataru Kitao Text&Edit_Masae Wako