デンマークの首都コペンハーゲン(CPH)を拠点に活動するフォトグラファー 松浦摩耶さん(@mayanoue)による連載。第3回は、フリーマーケットで賑わう秋のコペンハーゲンについて。前回の記事はこちら。
誰かのいらないものは、誰かの宝物だったりする。フリーマーケットで賑わう秋のデンマークより、mayanoueのCPH通信 03
コペンハーゲン、気温11℃、曇り時々晴れ。
「晴れる〜!」
週間予報にぽつんとある小さな太陽をみて、ひとり小躍りする土曜の朝。本当に晴れるのか?と、まだ薄暗い窓の外を眺めていると、友人たちとのグループチャットがお出かけ情報で盛り上がりはじめました。
この季節のデンマークは、週に数時間でも晴れればラッキー。少しの晴れ間も逃すまいと、太陽が顔を出せば街に人が溢れます。この週末は天気にも恵まれ、私が暮らすNørrebro(ノアブロ)エリアのあちこちでフリーマーケットが開かれていました。早速、歩いて1分のところに住む近所の友人と角のキオスクで待ち合わせて、Jagtvej通りの「Det Grønne Loppemarked(グリーンフリーマーケット)」へ。
このエリアに住む若者たちのコミュニティが数年前にはじめたこのフリーマーケットは、友人たちの間でも毎度話題のイベント。街中の若者がすべてここに集まってるのでは?と思うほどの盛況ぶりです。
バスケットコートを囲むように並んだブースには、友人たちの姿がちらほら。手編みの帽子や、おばあちゃんのスカーフ、実家に眠っていたテーブルランプなど、それぞれが大切に使ってきたものが並びます。
一緒に来た友人は、他の友人が何年も着続けたレザーのジャケットを買っていきました。大切な人が大切にしてきたものを今度は自分が大切にする。そして売り手は、自分が大切にしてきたものの新たな里親をみつけるような、そんなあたたかい物のやりとりをあちらこちらで見かけました。
デンマークではフリーマーケットの他にも、「dba」というフリマアプリや、いらなくなったものを無料であげるFacebookのグループ「Free Your Stuff」が使われていたり、友人同士で服を交換する会「Clothing swap」もよく行われています。私も今の家に引っ越したての頃は、「dba」でテーブルと椅子を買い、「Free Your Stuff」でハンガーラックを手に入れ、友人からベッドフレームを譲り受けました。
友人たちの家に遊びに行っても、ほとんど新品のものがありません。前の住人が置いていったものや、住んでるアパートの中庭に置かれていた「take free」のボックスからもらったもの、はたまた道で拾ったものだったり。
インスタグラムでも「引っ越します。これいる人〜?」という投稿をよく目にします。捨てる前に「これいる?」と、一声かける小さなやりとりが、なんだかとてもあたたかいなと思うのです。
帰り道、ノアブロのいつものストリートで、今日という日にぴったりなグラフィティを見つけました。
「One man’s trash another man’s treasure」(誰かのいらないものは、誰かの宝だったりする)
きっとこの街のなかで、誰かの宝物がぐるぐる回って、また新しい場所を見つけているはず。
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松浦摩耶
Instagram: @mayanoue