「垣根を超えた出会い」が新たな扉を開く
グラフィックデザイナーと彫刻家が出会い、斬新なビジュアルと深遠なコンセプトをあわせ持つ、新たなアートの扉を開いた。連載第4回目は、いま注目のアーティストデュオ、Nerholが登場。対照的な2人の共創の秘密とは。
どこか、未知の星から届いたような不思議な響きを持つ言葉、Nerhol。その正体は、東京を拠点に活動するアーティストデュオだ。グラフィックデザイナーの田中さん(上写真:左)と、彫刻家の飯田さん(同:右)の出会いとは?
飯田:僕の個展を見た田中が連絡をくれたのがきっかけです。会って話すと互いの考えが面白くて。僕がいた静岡県に、彼が東京から何度も来てくれました。妻が「その人、本当に男?」と心配するほど(笑)。
田中:当時の僕はデザインの仕事もまだ駆け出しで、でもだからこそ「会いたい人と会おう」という気持ちが強かった。最初はただその思いでしたが、やがて自然と、一緒に制作してみようかとなりました。
2人の表現を融合させた鍵は“紙”。グラフィックデザイナーとして印刷物の可能性を追求する田中さんと、本を加工するコンセプチュアルな彫刻を展開する飯田さんの出会いが、新たなアートの扉を開いた。
代表的シリーズ『Misunderstanding Focus』は、波打つような奇妙なフォルムを持つ、多様な人々のポートレートだ。実は3分間連続撮影した肖像写真を200枚も重ね、彫刻を施したもの。積み重ねた“表層”は立体化し、人々の無意識の個性と時間の層が宿る。
田中:飯田の表現は、空間的な視覚を持つグラフィックとして見ても興味深かったんです。だから僕はNerholで「現代美術をやろう」というより、「何が起こるかわからない」その可能性に惹かれました。
飯田:僕が個人で続けてきた彫刻は、自分で読んだ文庫本など、既存の書籍を素材に彫るのが基本でした。でもNerholでは“彫る素材”を生むところから始まる。その広がりを得られたのが大きいです。
アイデアを“練る”田中さんと、アイデアを“掘る/彫る”飯田さん。謎の言葉、Nerholの由来はこんなところにあった。2007年に活動を開始、近年はそんな役割分担も超えた共創が進んでいる。個人でも活躍する2人にとって、Nerholという場所の価値とは?
飯田:2人でやると、自分が掘り下げてきたのとは違う要素を呼び覚ましてもらえるし、1人なら絶対やらなかった挑戦もできる。ちなみに『Powers of Two』という本があって、Appleのジョブズとウォズニアックのように、大きなブレイクスルーが2人の才能の融合で生まれた話は興味深かったです。
田中:僕らはまだ、そう呼ばれるには至ってないけどね(笑)。ただ、2人だからこそできることは確実にあるし、それは個人での仕事にも生きています。逆にいうと、互いに依存するのではなく、自立しているからこその関係性だとも思っています。
クールで穏やかな印象の2人は、こんなお茶目な話もしてくれた。デザインやアート以外でも、刺激を受ける表現ジャンルはありますか?と尋ねたときのこと。
田中:2人とも美術や哲学、経済まで、本はよく読むほうだと思います。ほかには…飯田くんは宇多田ヒカル、好きだよね?
飯田:それはただ純粋に好き、っていう感じ。あと、これは答えになるのかわかりませんが、制作で追い込まれてスタジオで延々作業するとき、2人でX Japanを大音量で聴いて、奇声を発したりしてます(笑)。あの「たぎる感じ」がいいんですかね。
田中:(笑)。2人とも中学のころ初めて聴いた世代だしね。“生と消失”というNerholが常に考えてることとも、意外とつながってるのかな。
結成以来、10年。評価は高まり、国内に加え海外の美術館やギャラリー、アートフェスなど、活躍の場は広がった。従来の写真とも彫刻とも異なる、道なき道を切り拓くNerholの挑戦は続く。
例えば、街路樹の断面をスライスした連続写真から生まれたシリーズは、より大きな時間の流れを問いかけた。近作では、扱うモチーフは社会的な出来事も暗示するものへ広がり、彫刻手法にも荒々しさが登場するなど、新境地を見せてくれる。
田中:日常に何気なく存在するものに違う角度から目を向け、意識すること。そして、物事はつながっていないようで関わり合っている。そうしたことを、作品で浮き彫りにできればと考えています。やはり僕には、社会で機能して初めて人の役に立つという思いがあって。それがデザインか美術かとかいう話ではなく、何を問い、具体化するかだと思います。
飯田:実は僕も、ほぼ同じことを考えていました。彫刻が社会に貢献しないとは思わない。ただ、それができる場所を探さなければならないはずだ、と。そのためには美術だけでなく多様な世界に接していこうとの思いが、振り返れば今につながっています。
Nerholに加えて各々の活動も忙しく、「最近は、昔みたいに時間がじっくり取れないのだけが悩み」と笑い合う2人。気心の知れた者同士の空気感と、馴れ合いではなく刺激を与え合う丁度いい距離感が素敵だ。そこからまた、新しいアートが生まれていく。
Photo: Kaori Nishida Illustration: aina m snape Text: Shinichi Uchida
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